1979 年 1979 巻 8 号 p. 1050-1054
微量のスズを水酸化トリウム共沈法により分離濃縮し,無炎原子吸光法で定量する方法を検討した。トリウムはスズの良好な共沈剤として働き,トリウム10mgを添加した試料溶液から,pH9でスズを共沈させ,2N塩酸で溶解して定容とした溶液の10μlを無炎原子吸光装置に供試することにより,試料溶液を直接供試する場合にみられるマトリックスの影響を除去して,スズを20~200ppbの範囲で定量することができた。スズの1%吸収感度は1.4ppbで,10回のくり返し実験で求めた精度は,いずれも標準偏差パーセントで約2%であった。検討した41種の共存イオンの中で,テルルにのみ100倍量の共存で負の干渉がみられた。また本法によりアルミニウム合金および黄銅中の微量スズの定量を試みたところ,JIS法による結果とよく一致した。
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