日本化学会誌(化学と工業化学)
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水和酸化スズ(IV)と遷移金属イオンの相互作用
小村 照寿高橋 光信今永 広人
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1979 年 1979 巻 8 号 p. 990-995

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抄録

酸化スズ(IV)表面から放出されるH+の量および遷移金属イオンの吸着量を測定することによって,SnO2と金属イオンとの相互作用を研究した。Cu2+,Co2+,Ni2+,Mn2+などの金属イオンは表面ヒドロキシル基のプロトン解離を促進するが,[Fe(phen)3]2+,[Co(en)3]3+などの安定な錯イオンはほとんどSnO2と相互作用を示さない。金属イオンの吸着量とH+放出量との関係およびそれらのpH依存性から,表面における相互作用は,SnO2の酸塩基反応によって生成した負の表面サイトと水和金属イオンとの間の内圏型相互作用であろうと推定される。また置換活性なZn-en錯体の特異な挙動は,この系の平衡分布図に基づくならば,上の相互作用の機構と一致するものと考えられる。表面錯生成反応の観点に立つと,H+放出量と吸着量の測定データは,負の表面サイトと金属イオンの結合比が1/1および2/1の表面化学種が生成されることを示している。それらの表面反応の平衡定数を算出し,SnO2に対する金属イオンの反応性を比較した結果,表面酸化物イオンへの親和力と金属イオンの加水分解定数との間に相関性が認められた。

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