日本化学会誌(化学と工業化学)
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塩化チオシアンによるポリメチルベンゼン,ポリメチルナフタレンおよび関連化合物の異常チオシアナト置換
鈴木 仁美臼杵 道世花房 昭静
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1980 年 1980 巻 1 号 p. 38-43

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抄録

室温の酢酸中で一連のポリメチルベンゼン,ポリメチルナフタレンおよび関連化合物を塩化チオシアンと反応させ,その生成物を検討した。テトラメチル-およびペンタメチルベンゼンは容易に核チオシアナト置換をうけて,対応するアリールチオシアナートを与える。側鎖上の置換反応はみられない。ヘキサメチルベンゼンやペンタメチルアニソールでは側鎖上に置換反応が起こり,それぞれ対応するベンジルチオシアナート,ベンジルイソチオシアナートおよび塩化ベンジルの混合物を生成する。側鎖上の置換反応は置換基の極性効果をうけやすく,メトキシル基は高いメタ配向性を示すが,電子求引基をもつ化合物では反応が起こらない。光照射のもとで反応を行なうと塩化ベンジルとベンジルイソチオシアナートの生成が顕著となるが,後者の一部はチオシアナートの光異性化で生じることがわかった。ポリメチルナフタレンでは,α位のメチル基のみが選択的にチオシアナト置換をうける。塩化チオシアンの求電子攻撃で生じたアレーニウムィオン〔9〕からプロトンが脱離してメチレンシクロヘキサジエン中間体〔10〕となり,これがアリル位のC-S結合の開裂によってイオン対〔11〕を形成したのち,溶媒かごの中でアンビデント性のチオシアン酸イオンとベソジル陽イオンがベンジル炭素上で再結合して,ベンジルチオシアナートとイソチオシアナートを与えるものと考えられる。

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