抄録
吸光光度分析においてアナログ微分方式により高次微分スペクトルを記録し,吸光度のかわりに高次微分値を測定すれば定量感度を飛躍的に増大できることがわかった。一例としてα,β,γ,δ-テトラキス(1-メチルピリジニウム-3-イル)ポルフィン[T(3-MPy)P]およびその銅(II)錯体を選び,そのSoret帯の高次微分スぺクトルを測定した場合には,n次微分値(n=1~4)を用いると感度は,約4.5n倍に増大することがわかった。高次微分吸光光度法の超微量分析への応用として,銅(II)-T(3-MPy)P錯体のSoret帯の2次微分スペクトル測定による超微量銅の定量について基礎的な諸条件を検討し,0.2~3.2ppbの銅の簡単かつ実用的な定量方法を開発し,提案した。この方法により飲用水中に含まれる1ppb程度の銅を前濃縮なしに良好な精度で定量することができた。