日本化学会誌(化学と工業化学)
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水一有機溶媒混合系におけるトリス(オキサラト)コバルト(III)酸錯イオン分解反応の速度論的研究
木村 優黒田 静代千葉 博子竹内 美恵岸田 夏美
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1982 年 1982 巻 7 号 p. 1157-1162

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抄録

水とメタノール(MeOH),エタノール(EtOH),t-ブチルアルコール(t-BuOH),ジメチルスルホキシド(DMSO),およびアセトニトリル(AN)の二成分混合溶媒中でトリス(オキサラト)コバルト(III)酸錯イオン([CO(C204)3]3-)の分解反応の速度論的研究を,イオン強度0.2moldm-3および温度25~40℃において行なった。どの溶媒においても分解反応速度は-d[[Co(C2O4)3]3-]/dt=k0bs[[Co(c2O4)s]3-]の速度式にしたがい,中性から酸性溶液中で1/2kobs=k0+kh[H+]+k2h[H+]2と表わすことができた。水一有機溶媒混合系の有機溶媒の種々のモル分率においてk0,kh,およびk2hを決定した。k0は溶媒の種類が変わってもほとんど一定値を示した。他方,梶および軌は溶媒の種類によりいちじるしく異なった値を示した。また,k0は有機溶媒のモル分率によらず一定値を示したが,梶およびk2hの値は有機溶媒量の増加にともなって大きくなった。khおよびk2hに対する溶媒効果は,モル分率0.2においてt-BuOH<EtOH<MeOH<DMSO<ANの順であった。このモル分率およびk2hの各反応経路の活性化パラメーターを決定した。どの溶媒に関しても活性化エントロピビンΔS0は負または小さな正の値であった。それに対し,ΔShおよびΔS2hはその数倍以上におよ擁ぶ大きな正の値を示した。得られた結果について,(1)溶媒の誘電率,(2)プロトンの溶媒和(HSolv+),(3)反応中間体の溶媒和,による影響を考慮して考察した。

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