日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
半導体技術と酵素固定化技術を組み合わせた小型尿素センサー
宮原 裕二森泉 豊栄塩川 祥子松岡 英明軽部 征夫鈴木 周一
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1983 年 1983 巻 6 号 p. 823-830

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抄録
ISFET(lonSensitiveFieldEffectTransistor)のゲート絶縁膜表面にセルロース=トリアセタート,グルタルアルデヒド,4-アミノメチル-1,8-オクタンジアミンからなる膜を形成し,その膜表面にウレアーゼを固定化した小型尿素センサーを製作し,溶液中の尿素の定量を試みた。ウレアーゼは尿素を分解する酵素であり,その反応にともなって溶液のpHが変化する。この尿素センサーは尿素濃度に依存したpH変化をISFETで検出するという原理である。測定はウレアーゼを固定化したFET(尿素FET)と固定化していないFET(Ref.FET)との差動出力を測定した。本センサーで得られた検量線から,5×10-5g/mlから1×10-2g/mlの濃度範囲の尿素の定量が可能であることが朗らかになった。応答時間は1分であり尿素一ウレアーゼの反応速度と,それにより生成された水酸化物イオンが有機膜中を拡散する速度で律速されていることが推察された。また本センサーを用いて1日1回1×10-3g/mlの尿素に対する応答を調べた結果,26日経過時点で±3mVの範囲内の再現性で応答が得られた。本センサーの応答速度,寿命はすでに報告された尿素センサーと同程度あるいはそれ以上であり,濃度測定範囲は同程度であった。
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