日本化学会誌(化学と工業化学)
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高分子/液晶複合膜の気体選択透過機能とその酸素富化膜への応用
鷲巣 信太郎梶山 千里高柳 素夫
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1983 年 1983 巻 6 号 p. 838-846

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抄録
高分子(ポリカーボネート,PC)に液晶(N-(4-エトキシベンジリデン)-4-ブチルアニリン,EBBA)をブレンドした高分子/液晶複合膜を調製し,膜構造と気体透過性との関係を検討した。DSC,X線回折,走査型電子顕微鏡観察の結果は,膜中のEBBA分子が30wt%まではほぼ分子状に分散し,それ以上の分率ではPCからなる三次元網目構造内にEBBAが連続相ドメインとして相互にからみ合った凝集組織を形成することを示唆した。等温収着,吸着一脱着実験から,EBBAを60wt%含む複合膜は気体透過性を評価するさいに,液晶転移温度TKNより高温域では均質膜とみなすことができる。60wt%EBBA複合膜の各種炭化水素ガス透過性はTKNに対応する狭い温度域で数百倍増加するとともに,その気体透過機構がTKNを境として拡散律速から溶解律速へと変化する様相を示す。これはPC薄膜を複合膜にラミネートした膜の気体透過挙動から確認された。PCIEBBA複合膜で得られた知見は一般の高分子/液晶複合膜に適用できる。酸素との親和性が良好な液晶,ブチル=4-(4-エトキシフェノキシカルボニル)フェニル=ルポナート(BEPcPC)を60wt%ブレンドしたPCIBEPCPC複合膜が,液晶転移直後の333Kにおいてすぐれた酸素透過性能(PO2=2.25×10-9cm3(STP)・cm-1・s-1・cmHg-1)と選択分離性能(Po2/PN2=2.81)とを併せもつことが明らかとなった。
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