日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
o-キノン類のアリルスズ試剤によるアリル化反応における位置および立体選択性におよぼず Lewis 酸の効果
丸山 和博宅和 暁男曽我 治
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 1985 巻 3 号 p. 362-369

詳細
抄録

アリルスズ試剤(アリルトリプチルスタンナン[2], trans-2-プテニルトリプチルスタンナン[3])と 1,2-ナフトキノン類の反応を三フッ化ホウ素工一テル錯体共存下で行なうと,4-アリル-1,2-ナフタキレンジオールが高収率で得られる。[3]と 1,2-ナフトキノン類との反応でのクロチル側の位置選択性は, 1,2-ナフトキノンの 3-位の置換基の電子的効果に支配される。すなわち,3-位に電子供与性基が存在する場合には α-付加体が選択的に生成するのに対し,強い電子求引性基が存在する場合には γ-付加体が優先的に生成する。これらの反応を Lewis 酸非共存下で行なうと,生成物の取率は低下するものの同じ生成物を与える。しかし,クロチル側の位置選択性はいちじるしく向上し α-付加体だけを与えた。さらに Lewis 酸が存在する系ではクロチル基は立体選択的に導入されるのに対し,非共存下では立体選択性は低下した。より強い Lewis 酸である無水塩化スズ(N)や塩化アルミニウム共存下での反応では,位置選択性に変化がみられ, Lewis 酸が強くなると γ-付加体の生成が増加する傾向がみられたが収率はよくなかった。また,本反応を o-ベンゾキノン類に応用したところ,α-付加体が選択的に得られ,γ-付加体が選択的に得られる p-ベンゾキノンとはいちじるしく異なる選択性を示した。これは p-キノンでは 1,2-付加,ついでアリル転位により反応が進行するのに対し, o-ベンゾキノンの場合には Michael 付加で反応が進行するためと示唆された。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top