日本化学会誌(化学と工業化学)
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イオン注入によリ改質した炭素材の表層物性と電気化学的性質
高橋 勝緒吉田 和夫岩木 正哉
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1985 年 1985 巻 6 号 p. 1055-1063

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抄録

種々の元素のイオン注入による炭素材の表層改質を試み,表層物性および電気化学的性質を多面的に調べた。注入元素は,Zn,Cd,Ti,およびAr,注入量は1016~1017ions・cm-2,注入エネルギー150keVとした。ダイヤモンドへのイオン注入においては,表層中の注入元素の濃度-深さ分布はほぼ飛程理論にしたがい,平均投射飛程の約2倍の厚さの表層がアモルファス化することが,Rutherford後方散乱スペクトル法によりわかった。このアモルファス化は,ダイヤモンドの表面を導電性とすることに役立つ。ガラス質カーボン(GC)へのイオン注入においては,注入元素はほぼ飛程理論にしたがう分布を示すことが,二次イオン質量分析法の結果によって示された。また,注入層中のTiおよびZnは,それぞれTiO2およびZnOとして存在することが,X線光電子分光により判明した。ラマン分光法の測定から,イオン注入によりGC表層のグラファイト構造がアモルファス化することが示された。イオン注入したGCを作用電極として,電極の酸化還元挙動をボルタンメトリー法により測定し,注入したZnあるいはCdが電極反応しない安定な状態であることがわかった。イオン注入したGCの電極特性は,非注入にくらべ,低ベース電流,高水素過電圧を示し(Ti注入は非注入と同等),[Fe(CN)6]3+/4+の酸化還元反応や溶存酸素の還元挙動に十分な反応性を示すことがわかった。これらは,電気化学分析(ボルタンメトリー)用作用電極として優れた特性である。

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