日本化学会誌(化学と工業化学)
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アモルファス薄膜ニッケル-ホウ素合金の調製とその表面状態および反応性
今中 利信玉置 純寺西 士一郎
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1985 年 1985 巻 6 号 p. 1064-1069

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抄録

アモルファス薄膜Ni-B合金を,グロー放電を用いたRFスパッタリング法により薄膜状に調製した。ターゲットには高純度ニッケルヒ板を,放電ガスにはアルゴン,ジボラン(B2H6),ならびに水素の混合ガスを用い,放電ガス圧を6~33Paとしてグロー放電を行ない,パイレックスガラス板上に合金薄膜を付着させた。合金の表面組成と表面状態を,X線光電子分光法(XPS)により測定した結果,放電ガス組成を変化させることにより種々の組成のアモルファスNi-B薄膜合金を調製できることがわかった。またXPSのNi2p3/2レベルのスペクトルにおいて,ホウ素濃度増加とともにサテライトピーク強度が弱くなり,その位置が主ピークから離れ,また主ピークの対称性がよくなった。これは,ホウ素濃度増加とともにニッケルの電子密度が高くなることを示し,ホウ素からニッケルへ電子が移動していることがわかった。このようにニッケルの電子密度の異なる種々の組成のNi-B合金を用いて,1,3-ブタジエンの水素化反応を行なったところ,その生成物分布に変化が見られた。これについてニッケルの電子密度と関連づけて説明することができ,ニッケルの電子密度増大とともにニッケルの水素化能が増大することがわかった。

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