日本化学会誌(化学と工業化学)
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核磁気共鳴によるフラビンモノヌクレオチドと銅クロロフイリンの相互作用
円満字 公衛
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1985 年 1985 巻 9 号 p. 1639-1643

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抄録

銅クロロフイリン(Cu-chln)とフラビンモノヌクレオチド(FMN)との複合体の分子構造を1H-,13C-,31P-NMR法により推定した。FMNにおける内部運動の有無を推定する手段としてFMN単体の13C-緩科時間を測定した。リボース炭素のみかけの回転相関時間はイソアロキサジン環の炭素に帰着するそれよりもわずかばかり短く,リボース鎖はいくぶん内部運動している。メチル基は4×10-11sの相関時間で内部回転している。1H-縦緩和時間のデータから,Cu-chlnとFMNの複合体の回転相関時間はすべてのプロトンについて同一の値をもつので,この値を13C-NMRのデータの解析に用いた。Cu-chln-FMN複合体のFMN炭素の縦緩和時間を測定した。観測した13C-T1を仮定した構造から推定したT1と比較して複合体の構造を決定するコンピューターシミュレーションを行なった。この方法において,Cu-chlnのクロリン環とFMNのイソアロキサジン環の間の角を0°から90°まで変えたところすべての角が可能であった。しかし分光データはクロリン環がイソアロキサジン環と平行でむあることを示唆した。その結果,環一環距離は4.OÅであると推定された。1H-NMRの横緩和時間を使って電子スピンがCu-chlnのCu2+からFMNプロトンに流入していることを確認した。このことは電荷移動錯体がCu-chlnとFMNの間に形成されていることを示唆する。

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