日本化学会誌(化学と工業化学)
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シアン分解法を利用する多硫化物溶液中硫黄化学種のイオンクロマトグラフィー
池田 早苗佐竹 弘背川 浩明
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1985 年 1985 巻 9 号 p. 1704-1709

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抄録

多硫化物溶液中の硫黄化学種をノンサプレッサー型イオンクロマトグラフにより簡単に定量する方法について検討した。すなわち,多硫化物溶液中の多硫化物硫黄をシアン化物イオンにより分解(以下シアン分解という)してチオシアン酸イオンを生成させたのち,電気伝導度検出器および紫外吸収検出器(UV検出器)を用いたイオンクロマトグラフにより無機硫黄化学種を分離定量する方法である。電気伝導度検出器を使用すると多硫化物溶液中の硫化物イオン,多硫化物硫黄(チオシアン酸イオン),亜硫酸イオン,チオ硫酸イオンおよび硫酸イオンを分離定量できることがわかった。UV検出器を用いた場合には,硫化物イオン,チオシアン酸イオンおよびチオ硫酸イオンを上記より感度よく定量できた。なお,シアン分解にともなう各硫黄化学種の変動についても検討した。シアン分解は多硫化物硫黄に対して2倍当量のシアン化カリウムを添加して,90℃で10分間反応させるのが適当であった。
本法は電位差滴定法などと比較して,操作が簡単であり,複雑な組成をもつ多硫化物溶液中の各硫黄化学種を迅速に検出定量できるという特徴がある。

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