1985 年 1985 巻 9 号 p. 1715-1720
4-フェナントロール[1]は,そのヒドロキシル基近傍に立体的込み合いがある。そのことがフェノールとしての[1]の反応にどのように影響するかという興味を中心に,そのニトロ化と塩素化における反応性と配向性を調べた。[1]は65%硝酸により氷酢酸中で,60℃という比較的高い温度で初めてニトロ化され,1-および3-ニトロ体を生じたが,このとき,o/p 比は3.7という高い値であった。また塩化スルフリルを用いて氷酢酸中,50℃で長時間,塩素化したとき,[1]は1-および3-クロロ体を生成したが,その一部はなお未反応のまま残った。このように両反応を通じて見られた[1]の低い反応性と,ニトロ化における高いo/p比とは,ともにヒドロキシル基に関する立体効果に起因すると結論された。
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