1985 年 1985 巻 9 号 p. 1721-1727
テトラリンおよびレメチルナフタレン溶媒中でのピベンジルの熱分解反応を,流通式反応装置を用いて400~480℃,10~80MPaの範囲で追跡した。ビベンジルの分解による主生成物はトルエンであり,分解速度は溶媒の種類および濃度に依存せずビベンジルの一次で表わされた。またビベンジルの熱分解反応は加圧によって抑制されたが,その程度はわずかであった。この反応に対する圧力効果を溶媒分子による“かご”効果の観点から検討し,ベンジルラジカル対への解離反応に対する活性化体積値は温度の低い場合と同穐度の小さな正の値を示すことを推定した。さらに同反応条件下における溶媒の挙動を迫跡し,テトラリンの1-メチルインダンへの異性化反応はラジカルの存在(ビベンジルの添加)や高圧化によつて促進され,またテトラリンからナフタレンへの転化は,ビベンジル高濃度の条件下では水素移動反応と脱水素反応のみによって進行し,そのうち水素移動反応が優勢であることを定量的に示した。また1-メチルナフタレンは脱メチル反応や多量化反応をひき起こしたが,いずれも高圧下ほど反応は促進され,ビベンジルの添加によって両反応が促進されたことから,これらの反応がラジカル連鎖機構を含んでいる可能性を示唆した。
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