日本化学会誌(化学と工業化学)
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石灰処理によるクロム革からゼラチンの生成に関する検討
岡本 和吉隅田 卓安井 三雄山本 忠弘
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1985 年 1985 巻 9 号 p. 1751-1756

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抄録

クロム革から工業用ゼラチンの製造では,排水にクロムや溶解した革くずが混入する。この汚濁排水は硫酸処理工程に大きく起因するので,この工程をはぶいた方法でゼラチン化を行ない,その収率と品質ならびに排水中のクロム含有量を検討した。
クロム革を3日間石灰液に浸し,水洗とpH調整のあと70℃の熱水で3時間抽出すると,収率40%,粘度157mp,ゼリー強度415g,カルシウム含有率0.8~2.0%,クロム含有率30~70PPmのゼラチンが生成した。品質は現行製品よりもよかった。70℃につづいて90℃で2時間抽出すると,さらに40%収率でゼラチンが生成した。この品質は70℃抽出ゼラチンのそれとくらべて劣る。排水中のクロム(III)は0.09ppin以下,クロム(VI)は検出されず,クロム革から除去されたクロムは残留物として回収できた。本法は汚濁排水の改善に有用であることがわかった。また,収率と品質も現行製造法でのそれらとくらべて劣らない。しかし,収率の一層の向上とゼラチン中のカルシウム含有量の低減が今後の検討課題である。
石灰浸漬すると,クロム革は変色し,熱変性温度は低下し,カルシウム含有率は増大した。このことは脱クロムが起こり,生じた遊離のカルボキシル基はカルシウム塊を形成したものと考えられる。

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