日本化学会誌(化学と工業化学)
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有機性廃棄物の熱分解にともなう重金属の挙動
堀場 裕子山中 伸一
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1985 年 1985 巻 9 号 p. 1757-1762

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抄録

熱分解法は有機性廃棄物の処理および再利用法の代表的なものの一つであるが,熱分解生成物の再利用や処分にさいして,右機性廃棄物に含まれる重金属が新たな環境汚染の原因となり得る。そこで,著者らは4種類の有機性廃棄物に含まれる重金属の種類と含右量を求めるとともに,空気中で熱分解し,生成した固体残留物に含まれる重金属量から,重金属の揮散に対する分解温度(390~1000℃)の影響について実験的に検討した。その結果,廃塩化ビニル樹脂からCd,ZnおよびPb,廃ゴムからZn,PbおよびFe,潤滑抽系廃油からZn,Pb,CuおよびFe,そして廃塗料からZn,Pb,Cu,FeおよびCrを検出した。熱分解において,重金属の揮散は主成分の有機物の分解する温度より高温で起こり,揮散量は廃棄物の由来や組成に依存した。重金属別では,廃塩化ビニル樹脂中のCdがもっとも低い温度(550~750℃)で揮散した。廃塩化ビニル樹脂中のZnや水溶性の潤滑油系廃油と廃水系エマルシ9ン塗料に含まれるPb,Zn,CuおよびFeは750℃近辺で,また,カーポンプラックを含む廃合成ゴム中のZnは900℃前後で揮散した。しかし,大部分の試料に含まれるPb,Zn,Cu,FeおよびCrは熱分解後,固体残留物に濃縮された。

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