日本化学会誌(化学と工業化学)
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水素で橋かけしたベリリウム化合物の構造に関する理論的研究
橋本 健朗長村 吉洋岩田 末廣
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1986 年 1986 巻 11 号 p. 1377-1383

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抄録

非経験的分子軌道(ab initio MO)法の閉殻系SCF法に基づくエネルギー勾配法により,(BeH2)n;n=1~5およびHBeX:(X=BH2,CH3,NH2,0H,F,Cl)の単量体と水素橋かけ二量体の安定構造を求め,振動解析を行なうことによってBe原子のとる化学結合と安定性について考察した。とくに,BeH2およびBe2H4にっいては,安定構造に対する基底関数依存性を調べた。二量化エネルギーは,配置間相互作用法(SDCI)および多体摂動法(MP3)により電子相関を考慮して見積った。BeH2は,Be-Hのσ軌道とBeの空の2p軌道の相互作用によって多量化し,一分子ごとに約120kJ/molの安定化を示す。多量化にともなう安定化エネルギーから,Be原子としては四配位的な結合を好む傾向がある。また,HBeXではXの電気陰性度が大きくなるにつれて,Be-Xの結合距離が短くなり,強い結合をとるようになる。Be原子のとる化学結合はイオン性を帯びた共有結合で,とくに酸素と強い結合をする傾向がある。水素橋かけによる二量化エネルギーは,いずれも約60~100kJ/molで,エネルギー的にも構造的にも,末端置換基(X)の影響は小さいことがわかった。

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