日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
オージェ電子および電子エネルギー損失分光法による鉄合金粒界破断面の結合状態
奥 正興広川 吉之助
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 1986 巻 11 号 p. 1432-1437

詳細
抄録

オージェ電子分光法(AES)と電子エネルギー損失分光法(EELS)により, 鉄-リンおよび鉄-硫黄合金の粒界破断面(IG)の結合状態, すなわち界面構造を調べた。その比較として, 粒内破断面(TG), 鉄リン化物, 鉄硫化物を選んだ。IGでのリンと硫黄のLVVAESは, それらの原子が鉄金属表面に吸着したときに見られるスペクトルパターンを示した。またFe 3p EELSはIGの表面第一層にも鉄原子が存在することを示した。 一次電子の運動エネルギー(Ep)の200eVから500eVへの変化にともなって, 鉄-リンのIGでの価電子帯一伝導帯間の遷移スペクトルは変化した。しかし鉄-硫黄のIG ではそのような変化は見られず, 損失エネルギーはTGのものと一致した。FeM2,3VVAESでは鉄硫黄のIGにおいてFeM2,3-3d(1)-3d(1)遷移が観測されたが, 鉄-リンのIGではそれは見られなかった。 これとEELSのEp依存性は, IGでの鉄-リン間の結合は鉄-硫黄間の結合より強いことを示している。イオンスパッタリングによるFe3PとFe7S8のスペクトル変化は, スパッタリング後の表面で鉄とリンあるいは硫黄が混在していることを示した。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top