日本化学会誌(化学と工業化学)
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2,3-エポキシ-2,3-ジヒドロ-2,3-ジフェニル-1H-インデノンのホトクロミズムと分子構造共鳴ラマンおよび赤外分光法による研究
井口 英里伊藤 信一高橋 博彰
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1986 年 1986 巻 11 号 p. 1622-1625

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抄録

2,3-エボキシ-2,3-ジヒドロ-2,3-ジフェニル-1H-インデノン(以下DPIOと略記する)のホトクロミズムにともなう分子構造の変化を共鳴ラマンおよび赤外吸収スペクトルにより研究した。DPIOに紫外光を照射したとき両スペクトルともにみられるおもな変化は,DPIOのC=0伸縮振動1737cm-1(赤外:1730cm-1)とエポキシ環の呼吸振動1210cm-1が消失し,代わって1567cm-1(赤外:1570cm-1)および1256cm-1(赤外:1260cm-1)のバンドが出現することである。このスペクトル変化は,DPIOのエポキシ環のC-C結合が紫外光によりヘテロリティックに開裂したため,カルボニル結合にC-O-の共鳴構造の寄与が生じ,結合次数が低下して伸縮振動が低波数にシフトしたとして説明される。また,1256cm-1のバンドはピリリウム環の呼吸振動に帰属される。したがって,この結果は紫外光射により生成した赤色種が,1,3-ジフェニル-2-ベンゾピリリウム-4-オラートの構造をした原子価互変異性体であるとするUIImanらの説を裏付けるものである。

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