日本化学会誌(化学と工業化学)
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活性炭による水銀(II)イオンの還元におよぼず配位子の影響
白樫 高史柿井 一男栗山 光央
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1986 年 1986 巻 12 号 p. 1803-1809

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抄録

活性炭,Hg2+および種々の配位子が共存する系からの水銀の気化量を測定し,活性炭によるHg(II)の還元反応について溶液内に存在するおもな化学種と対応させて検討した。[Hg(OAc)n](2-n)(n=0~4)錯体は遊離の水銀(Hg2+,Hg(OH2)と同様に還元された。[Hg(gly)2]錯体は中性付近では遊離の水銀より気化量は少ないものの,pH9以上では容易に還元された。EDTA錯体を形成した場合には活性炭の種類により還元されやすさは異なった。ハロゲン化物イオン,ピコリン酸あるいはシスティンと錯体を形成した場合には水銀の気化反応はほとんど認められなかった。これらの結果から,Hg2+イオンは種々の配位子と錯体を形成した場合にも活性炭によって還元され得ることが明らかとなった。また,活性炭による水銀の気化量は共存する配位子の種類,活性炭の種類およびpHによっても影響された。したがって,活性炭によるHg(II)の吸着除去あるいは吸着機構を検討する場合には,溶液中のHg(II)の溶存状態はもちろんのこと,活性炭による還元反応の有無についても考慮することが重要であろう。

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