1987 年 1987 巻 3 号 p. 322-327
C-2エピマーであるD-グルコーメ(D-Glc)およびD-マンノース(D-Man)をNi-tmen錯体,[Ni(H20)2(tmen)2]Cl2(tmen=1-ジメチルアミノ-2-(メチルアミノ)エタン)と反応させると,いずれの場合もすみやかに基質のC-2-エピマー化が起こり,さらに,糖成分としてD-Manのみを含む同一の緑色錯体が生成する。本反応中に発現する,Nj(II)錯体によるC-2-エピマー間分子識別の要因を明らかにする目的で,(Glc,Man)の系でD-Manに対し澤択的に得られる配糖錯体〔3〕の構造解析をEXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)法により行なった。実験室系EXAFS装置により(a)Ni Foil,(b)配糖錯体〔1〕,([Ni(L-Rha-tn)2]2+),(c)複核配糖錯体〔2〕(μ-Man-[Ni2(CH30H)(N-D-Man-dmen)(N,N'-(D-Man)2-dmen)]2+),(d)配糖錯体〔3〕(未知試料)についてX線吸収スペクトルを測定し,これらのEXAFS成分を解析した結果,配糖錯体〔3〕は,N-マンノフラノシド橋かけ配位構造を有するNiの多核錯体であると考えられ,さらに,このような配位力の強い橋かけ構造の有無がマンノース型エピマーに対する選択的錯形成の要因になっているものと推察される。
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