1987 年 1987 巻 6 号 p. 1054-1058
18-8ステンレス鋼を大気中,400~700℃ で酸化すると,光干渉性の酸化皮膜が形成する。オージェ電子分光法とX線光電子分光法の測定結果により,この酸化皮膜の主成分はCr,Fe,Oであり,Ni含有率は少ないことがわかった。酸化温度の上昇に応じて,酸化皮膜中のFe含有率が減少し,Cr含有率が増加する傾向がある。酸化皮膜の外層はFe203あるいはFe304+Cr203,内層はFeO+Cr203からできている。高温酸化処理はステンレス鋼の耐孔食性に大きく影響を与え,400℃ で酸化した試料では通常め孔食点がでており,600℃ で酸化した試料では,表面皮膜がはく離されて,素地を侵食する二段階であるζ とがわかった。酸化濃度が高いあるいは酸化時間がながいほど,孔食電位が低くなり,耐孔食性が低下する。これは高温酸化による酸化皮膜中の欠陥およびCr欠乏層のために塩化物イオンの侵食が抑制できず,孔食が発生するためと考えられる。
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