日本化学会誌(化学と工業化学)
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酵素-金属イオン-核酸複合体モデルとしての芳香族ジアミン-銅(II)-ヌクレオチド三元系錯体,ビス[(アデノシン5'-リン酸)(1,10-フェナントロリン)アクア銅(II)]硝酸塩・八水化物,ビス[(グアノシン5'-リン酸)(ジ-2-ピリジルアミン)アクア銅(II)]三水化物,およびビス[(ウリジン2'-デオキシ-5'-リン酸)(ジ-2-ピリジルアミン)アクア銅(II)]・五水化物の結晶構造
青木 克之山峰 博史
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1988 年 1988 巻 4 号 p. 611-620

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抄録

酵素活性中心における酵素-金属イオン-核酸相互作用の立体化学に関する知見を得る目的で,そのモデルとして3種の三元系芳香族ジアミン-銅(II)-ヌクレオチド錯体,[Cu(AMPH)(phen)(H2O)]2・(NO3)2・8H2O〔1〕(AMPH=アデノシン5'-一リン酸(N(1)にプロトン付加),phen=1,10-フェナントロリン),[Cu(GMP)(dpa)(H2O)]2・3H2O〔2〕(GMP=グアノシン5'-一リン酸,dpa=ジ-2-ピリジルアミン),および[Cu(dUMP)(dpa)(H2O)]2・5H2O〔3〕(dUMP=ウリジン2'-デオキシ-5'-一リン酸),の結晶構造をX線構造解析により決定した。これらの錯体で金属イオンは共通して二座配位子芳香族ジアミンとヌクレオチドのリン酸基との間に橋かけしている。〔1〕の構造の特徴はphen環とアデニン塩基との分子内スタッキングによる“folded-stacked” 構造であり,〔2〕および〔3〕の構造の特徴はdpa環の“端” とグアニン塩基あるいはウラシル塩基の“面” が分子内でたがいにほぼ直角に位置した“folded-edge-face” 溝造である。錯体はいずれも2原子のCuおよび二つのリン酸基からなる八員環キレート生成をともなう二量体構造をとっている。この種の三元系錯体結晶構造の一般的な特徴とその生物無機化学的意義について簡単に触れられている。

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