日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
Michlerケトンの一電子酸化還元によって生成するラジカルのESRとENDOR
藤田 英夫大矢 博昭
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 1989 巻 6 号 p. 915-920

詳細
抄録

Michlerケトン [1] の一電子酸化電位は0.99V(vs.NHE)であり, カチオンラジカル[+・]になりやすいが, 他方アルカリ金属による一電子還元 (-2.24V, vs.NHE)でも容易にアニオンラジカル[1-・]を生成する。
[1-・]はESRとENDORによって, その超微細結合定数(hfsc)が求められ, MO計算値とのよい一致を得た。また [1-・]は低温で線幅交替を起こすことが知られているが, ENDORスペクトルの解析からベンゼシ環のオルト位のゆらぎによることがわかり, そのhfscの変化として解析できた。このゆらぎの活性化嫉ネルギー(ΔE)は, Hydeらの方法から-15.16kJ/molと概算できた。
[1+・] のESRスペクトルからは, 一方のジメチルアミノ基とベンゼン環のみに不対電子スピン密度が局在化し, カルボニル基を含めた他方の骨格側にはまったくスピン密度分布がないとの結果が得られた。[1+・]の分子構造は, MO計算から見れば, 両ベンゼン環とカルボニル基が90°ねじれた状態に相当し, 最高被占軌道(HOMO)はより安定化することがわかった。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top