日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
分子末端変性ゴムの開発
吉岡 明榊上田 明男渡辺 浩志永田 伸夫
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 1990 巻 4 号 p. 341-351

詳細
抄録

高性能をもつ合成ゴムの開発をめざして,既存ポリマーを改質,変性して本来の特性を残した上に新しいすぐれた性能を付加する変性技術の開発を追究し,特にカーボソブラックとの相互作用改善に着目して研究を進めた結果,化学修飾による分子末端変性ゴムを開発した。これはリチウム触媒を用いたアニオンリビング重合末期に変性剤を付加する方法により,分子末端にカチオンを生ずる官能基を付加したものであり,ゴム~ カーボンブラック複合系の反発弾性をいちじるしく向上し,すぐれた低燃費タイヤ,オールシーズンタイヤ用ゴムとしでの性能を示した。またこの機構は,カチオンがイミニウムイオンであり,これがカーボンブラックの含酸素アニオンと強固に結合し,カーボンブラヅクの高次凝集構造の形成を防ぎ,ゴム中におけるカーボンブラックの分散を安定化させることに基づくことを確認した。またこれにいたる過程においてビニル結合含量が約70%の高ビニルポリブタジエンゴムを開発した。これは高ウェットスキヅド抵抗性と低ころがり抵抗性をバランスよく両立させたすぐれた低燃費タイヤ用ゴムであるが,この高性能は,ポリマー分子が短鎖側鎖構造を多くもつことによりポリマー~ カーボンブラック相互作用に変化を与えていることが,一つの要因をなしていることを認めた。この両手法を同じポリマーに導入することによりそれぞれの特徴を兼ね備えたすぐれたタイヤ用ゴムを得ることができた.なお,分子末端変性ゴムおよび変性技術の新しい応用についても述べた。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
次の記事
feedback
Top