日本化学会誌(化学と工業化学)
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自動車用鋼板に形成されるリン酸塩hopeite結晶の改質とEXAFSを用いた構造解析
佐藤 登南 達郎
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1990 年 1990 巻 9 号 p. 899-907

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抄録
Zn3(PO4) 2.4 H2O . ZI13-xMnx( P O4) 2. 4H 2O で示されるhopeite結晶の構造状態を知る目的で,XANESスペクトル,EXAFSのFaurier変換,ならびにEXAFSの逆Fourier変換とカーブフィッティング法を適用し解析した。hopeite結晶中の亜鉛およびマンガン原子に対するXANESスペクトルから局所構造の変化を確認し,結晶中のマンガン成分はMn(II)の状態で存在していることを裏付けた。両hopeite結晶中のZn-K吸収端に相当するEXAFSのFourzer変換から.Zn-Oの結合距離を0.145nm付近に得たが,逆Fourier変換とカーブフィッティング法によって位相シフトを補正したところ,実際の結合距離は0.195nm近辺であることを明らかにした。そしてこの結合距離は,hopeite結晶の単位構造である[ZnO4]の四面体構造内の,Zn-Oに相当するものであることがわかった。一方,改質hopeite結晶中のマンガン原子について同様な解析を試みた。Mn-Oの見かけ上の結合距離は0.162nmと得られたが,位相シフトの補正をしたところ,実際の結合距離は0.215nmであった。マンガン原子の配位数Nは6.8を示し,これはマンガン原子がbopeite結晶の単位構造である[ZnO2(H2O)4]の八面体構造内の亜鉛原子を,[MnO2(H2O)4]のように置換して配位することを示唆した。本研究によって,これまで未解明であったhopeite結晶の改質構造を詳細に解析し決定することが可能となった。
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