日本化学会誌(化学と工業化学)
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煮沸によるホウレンソウ中のシュウ酸カルシウム量と結晶の変化
石井 裕子
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1991 年 1991 巻 4 号 p. 316-320

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抄録

ホウレソソウを水中で煮沸して含まれているシュウ酸カルシウム結晶の量,形態および結晶構造の変化を検討した。ホウレンソウを水で20分間煮沸して非結合性シュウ酸を抽出し0.1M塩酸中に一夜浸漬して全シュウ酸を抽出してそれぞれイオンクロマトグラフ分析して定量し,単位重量当たりの両者の含有量の差からシュウ酸カルシウムの含有量を求めた。実験に使用したホウレンソウ100g中に非結合性シュウ酸は730mg,全シュウ酸は912mgと実測され,シュウ酸カルシウムは二水和物として339mgとなった。さらにホウレンソウを長時間煮沸して抽出されるシュウ酸を定量し,全シュウ酸との差から煮沸後残存するシュウ酸カルシウム量を求めた。シュウ酸カルシウムは煮沸1時間後からわずかずつ減少し,約4時間後から減少速度が増加し,8時間煮沸すると約26%が消失した。ホウレソソウを煮沸する間に葉の中に存在するシュウ酸カルシウム結晶は表面からわずかずつ溶解し,まず微細な穴が生じ小さなき裂が現れ,数時間以上煮沸すると凝集体の構成粒子の結合部分が溶解し始め,別に再結晶と転移により小さなシュウ酸カルシウム一水和物の結晶が元の結晶表面に現れた。X線回折分析によれば,煮沸前ほとんど二水和物であったシュウ酸カルシウム結晶は8時間煮沸した後にはその約50%が一水称物に転移していた。

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