日本化学会誌(化学と工業化学)
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ミクロ溶媒抽出一黒鉛炉原子吸光法による天然水中のクロム(III)とクロム(VI)の分別定量
清水 得夫鈴木 敦新田 明弘四條 好雄
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1991 年 1991 巻 5 号 p. 380-385

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抄録

天然水中の微量クロムを黒鉛炉原子吸光法で分析するために,簡便・迅速な分離・濃縮法であるミクロ溶媒抽出法の適用を検討した。演過試料水5mlを用いる50倍濃縮の場合,酢酸ナトリウム-塩酸緩衝液を添加してpHを3.5とし,1-ピロリジンカルボジチオ酸錯体としてクロム(VI)を1,2-ジクロロベンゼン0.1mlに抽出し,クロム(VI)濃度を求めた。この条件ではクロム(III)は抽出されず,硫酸セリウム(IV)を用いてクロム(VI)に酸化してから抽出することにより,[クロム(III)+クロム(VI)]濃度を求めた。これからクロム(VI)濃度を差し引いてクロム(III)濃度とした。本法によるクロム(VI)の定量下限(10σ)は0.012μg/lであり,天然水中のサブppb(μg/l)レベルの定量が可能である。本法を河川水および海水に適用したところ,[クロム(III)+クロム(VI)]濃度に対するクロム(VI)濃度の割合は海水の方が高かった。また,試料水保存中のクロムの濃度変化についても調べ,演過後ガラス瓶に入れて冷蔵庫内に保存しておけば,遅くとも5日以内に分析すればよいことがわかった。

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