1991 年 1991 巻 5 号 p. 465-469
大気汚染物質が土壌環境に影響を与えることはよく知られているがその機構には明らかでない部分が多い。ここでは影響が顕在化する前に土壌中の化学成分に何らかの変化が存在するものと考え,表層土壌中の無機陰イオンの濃度変化について調査を行った。測定は表層土壌中の硝酸イオソと硫酸イオン,降水量および大気中の二酸化窒素,二酸化硫黄について2か月間行った。測定結果から表層土壌中の硝酸イオンや硫酸イオソは主に大気から直接吸収され,雨水により洗浄される過程がくり返されていることが明らかとなった。日本の森林は欧米に比較して大気汚染あるいは酸性雨の被害が少ないといわれている。この原因は日本の気象が多雨であるために土壌が湿っており,表層土壌が大気中の窒素酸化物や硫黄酸化物を直接吸収することが少ないことと,土壌に吸収された酸性物質も降雨により容易に洗浄されるためであることが推測された。
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