1991 年 1991 巻 6 号 p. 852-858
浅水性湖沼水中の溶解性有機物の挙動を開らかにするために,西印旛沼(平均水深1 .9m,面積5.29km2,千葉県)を選んで,水質の変動および溶解性有機物の組成について,1985年6月から1988年6月の期間に調査検討した。試料水を0.45μmメンブランフィルターで濾過し,濾液中のTOC濃度およびタンパク質など9項目を測定し,溶解性有機物濃度に対するタンパク質,炭水化物などの組成割合を求めた。溶解性有機物の組成割合は季節によって異なり,たとえば夏季の場合,タソパク質,25~36%;炭水化物・24~32%;揮発性有機酸,10~22%;アニオン界面活性剤,2~3%,フミン酸,1~3%;リグニン,1~4%;タンニソ,2~4%;尿素,4~9%および脂質,1~4%の範囲にあった。冬季は特にタンパク質とフミン酸がいちじるしく増加する傾向にあった。タンパク質,炭水化物,揮発性有機酸およびアニオン界面活性剤の組成割合の湘から判断すると西印旛沼の汚濁要因の一つは,集水域から流入する家庭下水に類似した有機物の寄与がいちじるしいことがわかった。また浅水性湖沼内では水生植物の代謝により溶解性有機物の増加も十分考慮しなければならないこともわかった。
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