日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1991 巻, 6 号
選択された号の論文の38件中1~38を表示しています
  • 小川 正, 佐藤 忠久, 高橋 修, 長谷部 一則, 古舘 信生
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 719-728
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    技術の成熟した銀塩写真材料において,カラー写真の色と保存性を大きく向上させる新規技術が開発され,一般用カラーペーパーに広く実用化されるにいたった。これらの技術は,人間の眼に敏感な,赤,赤紫,青などの色の鮮かさを一段と高めるまったく新しい発色剤とそれらの色の光に対する安定性を特異的に補強する光安定化剤とそして現像処理後にカラープリント上に発生する不要ステインを抑制するスティン防止剤から成り立っている。この新しいマゼンタ(赤紫色)発色剤は,五員環一五員環が縮合した1H-ピラゾロ[1,5-b][1,2,4]トリアゾール骨格を有し,これまで科学文献にその構造が記載されていない新規な複素環である。特異的に有効な光安定剤は,スピロインダン化合物であり,この化合物によりこの新しいカラーペーパーの光安定性は,従来のカラーペーパーに比較し,1.5~2.0倍にも向上した。またステイン防止剤は,現像処理後にプリント中にわずかに残存したカラー現像主薬が時間を経て着色成分となるのを未然に捕獲する特別に設計された求核剤と求電子剤である。これらの三つの技術の複合化が,色と画像の保存性を飛躍的に高め世界最高レベルの品質を有するカラーペーパーの実現を可能にした。
  • 櫻井 忠光, 菅原 清治, 井上 廣保
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 729-734
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオン(HPT)は,77Kの剛体ガラス溶媒中励起三重項状態において互変異性化を起こし三重項2-ピリジソチオール=1-オキシドを生成することが以前の研究において示唆された。しかしながら,チオンとエンチオール両異性体のりん光挙動におよぼす三重項消光剤の影響とこれら二つの異性体の励起三重項状態における相対安定性に関する熱力学的考察は,以前提案した"励起三重項状態における互変異性平衡"の機構が妥当でないことを示す。一方,互変異性化の起こりやすさにおよぼす重水素同位体効果と77Kにおける二つの異性体の相対りん光強度比におよぼす光照射の効果の解析から,励起状態のチオン異性体から光化学的にエンチオール異性体が生成する機構の寄与は小さいことが示唆された。また,HPTのUVスペクトルにおよぼす温度効果と重水素同位体効果に加えて,HPTのUVおよび蛍光スペクトルとエンチオール異性体に対応する構造をもつ2-エチルチオピリジン=1-オキシドのスペクトルとの比較から,エンチオール異性体のりん光量子収率はチオン異性体のそれと比較してかなり大きくなければならないことがわかった◎ さらに,このことがUVスペクトルでは検出できないほど少量のエンチオール異性体の基底状態における存在とその量の差が蛍光ではなくりん光発光挙動に顕著に反映する主な原因であると結論された。
  • 三浦 則雄, 原田 達朗, 清水 陽一, 山添 舜
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 736-740
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プロトン導電体(アンチモン酸)厚膜を用いた電流検出方式の室温作動型水素センサーについて検討を加えた。センサー素子は,多孔質アルミナ上にスピンコート法により形成した緻密なアンチモン酸厚膜(厚さ約10μm)の上下に,白金を外部および内部電極として取り付けた積層型構造とした。本素子の短絡電流は200~6000ppmの水素に対して濃度に直接比例する応答を示した。その応答速度は,例えぽ1000PPm水素に対して30。Cにおいて約10秒(90%応答)と速かった。外部電極をスパヅター白金から白金黒に変えると電流の方向が逆転したが,これはこれら電極の電気化学的な酸素還元活性の差に起因することがわかった。本素子の電流応答にはかなり大きな湿度依存性が見られたが,測定回路にセンサー素子と直列に外部抵抗を取り付けることにより湿度依存性を大幅に低減できることを見いだした。すなわち,3.3MΩの外部抵抗を付加した場合には応答の湿度依存性はほとんどなくなり,しかも電流値と水素濃度との比例関係はこの場合にも保たれることがわかった。
  • 坂井 淳一, 磯貝 浩司, 渡辺 勝也, 五十嵐 和枝, 古川 隆, 金井 博之
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 741-747
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビシクロ[4.1.0]ヘプタンおよびビシクロ[3.1.0]ヘキサソのシクロプロパン環にアミノ基あるいはN,N。ジメチルアミノ基をendoまたはexo位に置換した誘導体をパラジウム活性炭触媒およびRaneyニッケル触媒を用いて水素化し,環開裂位置におよぼす含窒素官能基の効果と分子内ひずみの影響について検討した。炭化水素溶媒中では,ビシクロ[3.1.0]ヘキサン置換体およびビシクロ[4.1.0]ヘプタン置換体は,置換基の隣接結合(ビシクロヘキサンではC1-C6,ビシクロヘプタンではC1-C7結合)で開裂した。しかし,酢酸溶媒中で水素化すると置換基の向かい側結合(ビシクロヘキサンではC1-C5,ビシクロヘプタンではC1-C6結合)の開裂も起こり,五員環縮合体では,方的に向かい側結合で開裂し,その際,endo-異性体は速やかな環の開裂と同時に,置換基の脱離をともなったが,exo-異性体は置換基を保持したまま,ゆっくりと環開裂した。これらの結果から,アミノ基は触媒に強く吸着して隣接結合での開裂を引き起こすが,アンモニオ基に変えると吸着能を失って,分子内ひずみの解消が反応の主たる駆動力となるために,ひずんだ向かい側結合の開裂が優先し,その過程でendo-位のアソモニオ基が容易に脱離することも,反応の促進に寄与することがわかった。
  • 坂井 淳一, 磯貝 浩司, 松木 和久, 東海林 博輝
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 748-753
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    7.7-ジフルオロビシクロ[4.4.0]ヘプタン1と1のフッ素原子を塩素で置き換えた2および臭素で置き換えた3を,Pd触媒を用いて接触水素化すると,フッ素の置換がendo-位かexo-位かの違いで興味ある挙動を示した。2および3の反応性は1に比較していちじるしく低かったが,環の開裂はいずれもC1-C6結合で起こった,生成物はシクロヘプタンとフルオロシクロヘプタンで,endo-フルオロ置換体では前者が唯一の生成物であったのに対して,exo-フルオロ置換体はフヅ素を保持する傾向が強く,両方の生成物を与えた◎ アミンを添加すると1および2は反応しにくくなったが,3は炭素一臭素結合の水素化開裂を受けて7-フルオロビシクロ[4.1.0]ヘプタンを与えた。endo/exo-7-フルォロ-,7-クロロ-および7-ブロモビシク.[4.1.0]ヘプタンを水素化すると,7-フルオロ-および7-クロロ置換体のendo-異性体は開環してシクロヘプタンを与えたが,exo-異性体の反応性は極めて低かった。一方,7-プロモ置換体ではexo-異性体の方が反応を受けやすく,このとき炭素-臭素結合の水素化開裂が優位に起こった。
  • 服部 豪夫, 岩舘 泰彦, 福田 宗之
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 754-758
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アモルファスクエン酸錯体法によるガーネット型Y3Fe5O12粉末の合成とその焼結性について調べた。まずガーネットの前駆体ゲルを調製し,熱重量測定(TG)-示差熱分析(DTA)によりその熱分解挙動を調べた後aこのゲルを大気中,種々の温度でか焼した。得られた粉末のX線回折結果(XRD)から,ゲルはYFeO3を経てY3Fe5O12に変化することがわかった。また,1100℃で2時間か焼することにより,Y3Fe5O12の単一相を得ることができた。さらに,得られた粉末の焼結性をY2O3とFe2O3の固相反応により調製した粉末のそれと比較検討した。その結果,アモルファスクエン酸錯体法で得たゲルを大気中,900℃で2時間か焼し,このべレヅトを1450℃で2時間焼結して得た焼結体の密度が,この方法での最高値4.83g/cm3(93.3%T.D.)を示した。これは固相反応法による場合の最高値5.00g/cm3(96.8%T.D.)にくらべて低い密度であったが,粒成長は抑えられ,しかも粒径が揃った微細構造を示していた。さらにXRDにより焼結体の結晶子径と格子定数を求めた。
  • 岡森 克高, 田中 茂, 橋本 芳一
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 759-765
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1988年11月に日本を出航した南極観測船「しらせ」の航路上において海洋大気中の浮遊粉じんを採取しyその分析結果から土壌粒子および汚染物質の海洋大気への輸送移動とその濃度分布について検討を行った。その結果,海洋大気中の土壌起源元素は,東アジアに近い西部太平洋では比較的高濃度となる傾向が認められ,陸地から海洋大気へと土壌粒子が輸送されていることがわかった。一方,陸地がほとんど存在しないインド洋から南極近海では,土壌起源元素の大気濃度はAl,Feで数 ng/m3, Siで10ng/m3と極めて低く,バックグラウンド濃度と言える。また,日本近海,東南アジア周辺の海域では・石漉燃焼などによる人為的起源の硫黄の影響がかなり大きいことがわかった。
  • 篠山 浩文, 武居 賢郎, 山沢 明子, 安藤 昭一, 藤井 貴明, 安井 恒男
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 766-770
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルキルグリコシドの活性炭への吸着,さらに,それを利用したアルキルグリコシドの水溶液からの単離について検討した。アルキルβ-グルコシド,アルキルβ-キシロシドともにアグリコンであるアルキル鎖が長くなるにつれて,活性炭への吸着が強まることが示唆された。一方,Aspergillus nigerβ-キシロシダーゼの糖転移作用により生成してくるアルキルβ一キシロシドの分離を活性炭カラムクロマトグラフィーを利用してイソプロピルβ-キシロシドを例に試みたところ,蒸留水,5%エタノール溶液による段階的溶離により容易に精製することができた。さらにヘプチルβ-キシロシドやオクチルβ-グルコシドのような界面活性能を持つ有用なアルキルグリコシドの回収について予備的に検討した。ヘプチルβ-キシロシドは,その溶液の濃度にほとんど関係なく活性炭に吸着され,50% 1-プロパノール溶液で溶離することにより,ほぼ定量的に回収されること,および活性炭1g(乾燥重量)は,およそ0.59のヘプチルmキシロシドを吸着しうることがわかった。
  • 石山 純一, 藤田 智之, 今泉 眞
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 771-773
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The stereoselectivity of group 8 metal catalysts has been examined in the hydrogenation of 2, 3-butanedione (1) and 3-hydroxy-2-butanone (2) at ambient temperature under atmospheric pressure of hydrogen. At the initial stage of the catalytic hydrogenation of 1, the primary product was found to be 2 over every catalyst.2, 3-Buatnediols (3) were produced over cobalt, nickel, ruthenium, osmium, iridium and platinum catalysts in further reduction, but 2 was not hydrogenated to 3 over palladium and rhodium catalysts. The catalytic hydrogenation of 1 over Raney nickel and cobalt, or ruthenium and iridium black catalysts yielded a small excess of meso-isomer of 3. A platinum black catalyst gave a high yield of meso-3 from 1 and 2. From these results, it seems that the catalytic hydrogenation does not proceed directly in the 1→3 fashion, and that the isomeric ratio of 3 (racemic to meso) reflects the stereochemistry of 2, the primarily-desorbed product, on the surface of respective catalysts.
  • 山下 隆治, 児玉 光博, 真鍋 修
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 774-776
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Deithyl 2, 3-pryridine dicarboxylates 3 were easily prepared in one pot synthesis by the reaction of a-chlorooxaloacetate 1, a, p-unsaturated aldehydes 2 and ammonia. Especially, diethyl 5-ethyl-2, 3-pyridine dicarboxylate 3a was obta i ned in a good yield (81%) by the reaction of 1, 2-ethyl-2-prop enal 2a and ammonia in chloroform using an autoclave. In the reaction in an autoclave, the yield of 3 a in chlorobenzene or toluene was similar to that of chloroform. But under atmospheric pressure, the yield of 3a was lower in toluene, benzene, and ethanol than in chlorobenzene.
  • 松崎 章好
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 777-785
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    成層圏オゾンの動態は,地球環境に重大な影響をおよぼす。本論文では,人工衛星「大空」に搭載された大気周縁赤外分光計LASの取得データを解析し,北半球低緯度における4月の成層圏オゾンの分布を求めた。その結果,まず,地上におけるオゾンのカラム全量の経度分布は,1966年にDutchが提出したモデルと基本的には完全に一致していることがわかった。すなわち,経度0°を中心とする半円での分布は,180℃を中心とする半円よりもオゾン量が多く,90°付近にオゾン量がとくに多い地域のあることを確認した。一方,LASのデータからは,こうした分布を各高度で得ることができるので,これから,全オゾン星と最も相関があり,変動率の大きいのは,40kmでの分布で,ついで30kmの分布であることが明らかになった。また分布の最大値を示す20km付近の変動率は小さく,10kmの方が大きいことも明らかになった。これらの結果は,従来から考えられている様な大気循環の地形効果という事だけでは解釈しにくく,オゾン生成の化学反応過程に地域分布があることを示している。実際この地域特有の春季の強い季節風とオゾン化学過程との相互作用に基iついた仮説は,本研究の解析結果を定性的に説明した。
  • 長島 珍男, 保母 敏行
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 786-794
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜硝酸塩を含む試料(4ml/min)と,0.13Mヨウ化ナトリウムを含む13Mリソ酸溶液(1ml/min)を連続的に混合,約45秒間加熱(50℃)し,その混合液を気-液分離管(ガラス管と多孔性テフロン管(内径1mm)から成る二重管)へ導入し,一酸化窒素を発生させた。発生した一酸化窒素はキャリヤーガス(窒素)を用いて気体用二次導関数分光光度計の光吸収セル(光路長25cm,セル温度150℃,体積80ml,λ=214.Onm)へ導き測定した。試料を導入してから約6分後に一定な応答を示した。亜硝酸塩が1×10-6~1×10-3Mの範囲で連続測定が可能であった。硝酸塩の定量には試料液をCd-Cu粒を詰めた還元カラムに通し,亜硝酸塊に還元後亜硝酸塩と同様に測定し硝酸堪と亜硝酸塩の合量を得,カラムを通さなかった時の値との差を求めることにより行った。発生した0酸化窒素を一定時間(20分間)濃縮させた後0光吸収セルに送って測定する高感度定量法について諸条件を確立した。この濃縮式定量法によれば2×10-8M程度まで測定が可能であった。本法を実海水試料中の硝酸塩・亜硝酸塩の定量に適用した。
  • 本水 昌二, 是近 勝彦
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 795-802
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銅の迅速,簡便,高感度,高選択的な吸光光度定量法について検討した。これは銅ハロゲノ錯イオン(CuBr2-)と染料陽イオンとのイオン会合体の溶媒抽出吸光光度法の利点(高感度,高選択)とフローインジェクション法の利点(迅速,簡便)をカップリングさせたものである。Cu2+はBr-の存在下,L-アスコルビン酸により還元されCuBr2-を生成する。この錯陰イオンはPEP+(4-(4-ジエチルアミノフェニルアゾ)-N-プロピルピリジニウムイオン)とイオン会合体をつくりクロロベンゼンに抽出される。有機相中のPEP+の吸収を575nmで測定することにより銅が定量される。三流路系を用い,キャリヤーには0.02ML-アスコルビン酸水溶液,試薬溶液には(10-4MPEP++0.03MKBr,pH5)を用いた。抽出溶媒はクロロベンゼンがよい。河州水などに存在する程度の無機イオンは妨害とならない。疎水性の大きい有機陰イオンはポリテトラフルオロエチレソ(PTFE)管への吸着性を利用することによりt銅と分離することが可能である。検量線は0~3×10-5Mの銅イオンに対して直線性を示した。1×10-6MCu2+のくり返しの相対標準偏差は0.7%であり,検出限界(S/N=3に相当)は2×10-8Mであった。分析時間は毎時30試料であった。
  • 代島 茂樹, 飯田 芳男, 越期 克也, 川林 滋郎
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 803-810
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    大気中の揮発性有機塩素系化合物71,1,1-トリクロロエタン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,クロロホルムおよび四塩化炭素について,化学イオン化質量分析法(CIMS)を利用する3種の定量方法を確立した。Townsend放電-CIMS法においては,テドラーバッグに採取した大気試料は不活性のキャピラリー(0.25mm i.d.×1m)により直接イオン源に導かれ,各成分は主に空気中の酸素から生じた反応イオンO2+との電荷交換反応,あるいは電子捕獲反応によりイオン化される。この方法では上の化合物中初めの3成分を,それぞれ(M-Cl)+(m/z 97),M+ (m/z 130),M- (m/z 164)の選択イオン検出法(SIM)により同時検出した。検出下限は0.5~1ppbであった。電子の解離共鳴捕獲反応によって生じる壇化物イオンCl-をSIMによって検出するGC/MS法では非濃縮法およびfienaxGCと活性炭による捕集濃縮法について検討し,5成分の検出を行った。検出下限は非濃縮法は0.01~0.1ppbで,濃縮法ではさらに半けた程度低かった。これらの方法を屋外,屋内の各所あるいはクリーニング店内などの空気の測定に適用し,汚染の現状を把握した。
  • 池浦 太荘, 溝口 次夫
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 811-815
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    大気中オゾン濃度の1時間値を測定できる,高感度な分子拡散型簡易瀾定器を開発し性能試験を行った。半透明のブラウン色のアクリル板でつくられた簡易測定器の大きさは,縦90mm,横50mm,重さ349であり,分子拡散膜として孔径0.2μma膜厚80μmのテフロソ製メンブランフィルターを用い,無蛍光のp-アセトアミドフェノールがオゾンと反応し,強い蛍光を発する二量体を生成する反応を利用している0蛍光強度の測定は,励起波長337nm,蛍光波長425nmで行う。定量下限は,1時間暴露のとき,約2ppbであった。蛍光強度とオゾン濃度との直線性は50~150PPbの範囲で相関係数γ=0.99(n=20)と良好で,暴露時間との直線性も30~90分および8~32時間の範囲で,いずれも相関係数γ=0.99@(n=12)と良好であった。オゾンの捕集速度は,温度の影響により約1.5%℃ の割合で増加したが,湿度の影響はほとんどなかった。風速の影響は,0.43~2.52m/sの範囲で約16%であり,簡易測定器が風に対して後ろ向きに置かれたとき,約10%低い蛍光強度を示した。性能試験の結果は,簡易測定器として要求される性能をほぼ満足しており,オゾンの濃度分布調査などにおいて,高感度オゾン簡易測定器を大気汚染測定局の補完として利用できる事を示している。
  • 池田 早苗, 本仲 純子, 佐竹 弘
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 816-820
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    吉野川の水質調査を行い,電気伝導率と溶存イオン種濃度との関係を明らかにし,電気伝導率より主な溶存イオン種を推定する方法を確立した。吉野用の水質は上流から下流に向かってほぼ比例的に溶存イオン種濃度が増加し,各イオン種濃度は下流で2倍以上に達していた。塩化物イオン,硝酸イオン,硫酸イオン,ナトリウムイオン,カリウムイオン,カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの濃度と電気伝導率には高い相関関係(栢関係数0.975以上)が認められた。それらの関係から求めた各イオン種濃度の推定値は生物活動の影響を受けやすい硝酸イオンを除いて,2年後に本流と支流の水質に適用してもイオンクロマトグラフィーの分析値とほぼ一致した。この推定方法は吉野川水系の水質分析結果の評価や溶存イオン種濃度の異常変動の判断などに役立ち,水域の環境管理などに利用できるものと考えられる。
  • 星加 安之, 劉 国林, 尾張 真則, 二瓶 好正
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 821-825
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The EPMA of studded tire-generated dust (dust fall) in winter season in the Matsumoto area (about 600 m above sea level) in Nagano Prefecture was carried out by a SEM equipped with an EDS instrument. The sample was collected in a dust jar during winter season as dust fall. The characteristic particles in the EPMA data are as follows : 6-2, spherical porous shape; main element, sulfur; followed Si, Al; about 40 pm, 6-9, long and slender shape; main element, Si and Al; 91-4 long and slender shape about 50 pm; main element -5, Fe sharp peak; 91-1, Mg relatively large peak, respectively (Figs.1-4).
  • 金 萬九, 矢川 一夫, 下里 隆, 井上 秀成, 白井 恒雄
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 826-830
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高密度都市域における浮遊粉じんの挙動と人間活動の周期の関係を把握するため,東京都新宿において夏季と春季に浮遊粉じん中のタイヤトレッド成分濃度の経時変化を調べた。その結果,タイヤトレッド成分の大気中濃度は昼間に高く夜間に低いこと,また日曜日よりも平日に高くなることがわかった。この濃度変化の傾向は都市域における人間活動の周期とよく一致していた。一方,都心より約20km離れた横浜市日吉における大気中タイヤトレッド濃度は風向により変化し,特に北西および北東の風の日に高かった。さらに,浮遊粉じんの垂直分布の測定から,大気中のタイヤトレッドは他の浮遊粉じんよりも粒径が大きいことが示された。
  • 金 萬九, 矢川 一夫, 蒲生 正典, 山本 憲子, 井上 秀成, 白井 恒雄
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 831-836
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    都市大気質の評価に有効な化学物質を検索するために高密度都市域における浮遊粉じん中のタイヤトレッドおよび無機塩類の濃度を1988年の春と1989年の夏に測定した。大気試料の捕集は人間活動の周期を考慮してサンプリソグ期間中4~8時間ごとに連続して行った。本研究では,塩化物,硝酸壇,硫酸塩,アンモニウム塩,ナトリウム塩などの無機塩類の垂直濃度分布を求め,タイヤトレッド成分のそれらと比較検討した。その結果,都市域の大気中タイヤトレッド濃度の日および週変化は浮遊粉じんのそれらと非常に類似しており,自動車の通行量に代表される人間活動の周期によく一致していることがわかった。これよりタイヤトレッド成分は都市大気質の指標物質として有効であることが示された。
  • 松本 寛, 中嶋 敏秋, 酒井 茂克, 野口 泉, 秋山 雅行
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 837-844
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    寒冷地である札幌市の住宅地域において,1986年1月から1987年12月まで大気浮遊粉じんを捕集し,大気中変異原活性についてその季節変動および気温,灯油消費量並びにベソゾ[α]ユピレン(BaP)など大気汚染物質濃度との関連について検討を行った。サルモネラ菌に対する変異原活性は,非暖房期と比較して暖房期に高く,中でも気温の低い1,2月に最高値を示し,暖房に使用する化石燃料の不完全燃焼が変異原活性に大きな影響を与えていると考えられた。変異原活性とBaP,多環芳香族炭化水素(PAH),1-ニトロピレン,NO2濃度などの問には,強い相関関係がみられ,これら汚染物質相互の影響が変異原活性に大きく関与していると推測された。また,PAHなどの間接変異原性物質のほか,PAHのニトロ置換体やヒドロキシ置換体などの直接変異原性物質が変異原活性に大きく寄与していると考えられた。BaPの全変異原活性への寄与率の経月変動は,TA98株で0.3~2.0%,TA100株では0.7~4.5%の範囲にあり,夏期と比較して冬期に高い寄与率を示した。
  • 永淵 修, 中村 又善, 黒州 陽一, 松犀 宏, 桜木 建治, 徳永 隆司, 永淵 義孝, 杉原 真司
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 845-851
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    周防灘西部海域堆積物中の多環芳香族炭化水素(PAH)の水平および垂直分布を明らかにし,PAHの起源の解明を試みた。堆積物中のPAHの起源は大部分が大気浮遊粉じんであることから,大気浮遊粉じん中PAHの組成比(ベンゾ[α]ピレン(BaP)/ベンゾ[ghi]ペリレン(Bghip),ベンゾ[α]フルオランテン(BkF)/ベンゾ[α]ピレン(BaP))を検討し,その結果から堆積物中PAHの起源の推定を行った。当海域のPAHの水平分布は,クラスターA(当海域南側)とクラスターB(当海域北側)の二つに大別された。それぞれのクラスターの海域におけるPAHの組成比を大気浮遊粉じん中PAHの組成比と比較した。その結果,クラスターAの海域においてPAHの起源は移動発生源の寄与であり,クラスターBの海域ではそれは固定発生源と移動発生源の寄与であると推定された。この推論はPAHと重金属(Pb,Fe)の関係と当海域の地形的要因から支持された。柱状堆積物についてはSite1(沖合)とSite23(沿岸部)のPAHの鉛直分布を調査し,福岡県沿岸部の工業化の歴史とSite23におけるPAHの組成比の変化の時期が一致した。
  • 立本 英機, 服部 豪夫, 古川 俊光, 生嶋 功, 栗原 真理, 安部 郁夫
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 852-858
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    浅水性湖沼水中の溶解性有機物の挙動を開らかにするために,西印旛沼(平均水深1 .9m,面積5.29km2,千葉県)を選んで,水質の変動および溶解性有機物の組成について,1985年6月から1988年6月の期間に調査検討した。試料水を0.45μmメンブランフィルターで濾過し,濾液中のTOC濃度およびタンパク質など9項目を測定し,溶解性有機物濃度に対するタンパク質,炭水化物などの組成割合を求めた。溶解性有機物の組成割合は季節によって異なり,たとえば夏季の場合,タソパク質,25~36%;炭水化物・24~32%;揮発性有機酸,10~22%;アニオン界面活性剤,2~3%,フミン酸,1~3%;リグニン,1~4%;タンニソ,2~4%;尿素,4~9%および脂質,1~4%の範囲にあった。冬季は特にタンパク質とフミン酸がいちじるしく増加する傾向にあった。タンパク質,炭水化物,揮発性有機酸およびアニオン界面活性剤の組成割合の湘から判断すると西印旛沼の汚濁要因の一つは,集水域から流入する家庭下水に類似した有機物の寄与がいちじるしいことがわかった。また浅水性湖沼内では水生植物の代謝により溶解性有機物の増加も十分考慮しなければならないこともわかった。
  • 滝本 和人, 川相 吉弘, 有吉 靖信, 古室 雅義
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 859-867
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    加熱処理したあるいは未処理の河川底質にNaHSO3水溶液を加えて行った無機態リン(IP)の脱着状況の解析から,異なった強度をもつ吸着サイトの存在が推測された。10ppmのNaHSO3水溶液で溶離するIPを弱く結合した,100ppmで溶離iするIPを中間的に結合した,それ以上で溶離するIPを強く結合したIPと定義した。底質から溶離するIPはこの弱く結合したIPであり,主として底質表面上のFeと結合していることが示唆された。この手法を実際の河川に適用し,粒径別にまた季節的にこの弱く結合したIPがどのように変動するのか,またそれらと上層水中の溶存態無機リンとの関係を調べた。
  • 薩摩 林光, 山崎 雄一郎, 栗田 秀實, 横内 陽子, 植田 洋匡
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 868-872
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Behavior of organic matter in the airborne aerosols during the long -range transport of photochemical air pollution was investigated in summer (29-31 July 1986). Measurements were made for every 3 hours along the transport route from the Tokyo Bay area to the i nland mountainous region. C21-C32 n-Alkanes, phthalates (dibutyl and bis(2-ethylhexyl)), C2-C10 dicarboxylic acids, pinonaldehyde, C10-C26 fatty acids, nonpolar unresolved complex mixture (NPUCM) and polar unresolved complex mixture (PUCM) were detected and their fraction of anthropogenic and natural components and those of primary and secondary compo nents were discussed. Concentration of organic matter in total increased when the poliuted air ma ss arrived at the observation sites. NPUCM and PUCM were much abundant. From the ratio of odd and even carbon number components, more than a half of n-alkanes was estimated to be anthropogenic. Biogenic compounds (pinonaldehyde, long-chain C12-C26 fatty acids and nalkanes)were minor contribution in the airborne aerosols, a large part of them, in particular the pinonaldehyde which was produced in the photochemical reactions, however existing in the gaseous phase in the daytime. Almost all of dicarboxylic acids and about a half of NPUCM and PUCM were also produced during the transport. Thus, the secondary components attained 42-53 % of organic compounds analyzed in the polluted air mass over the inland area. Here, the organic compounds analyzed, including NPUCM and PUCM attained 30-50 % of the total organic carbon.
  • 古賀 修, 村田 暁, 堀 善夫
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 873-878
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二酸化炭素(CO2)の電気化学還元に使用することを目的として,Cd修飾Cu電極を作製し,その活性変化と表面状態の検討を行った。CO2還元時にCd2+を共存させ,Cdを電着させることにより,Cu電極をCdで修飾した。Cdの電着量が増加するにつれ,主要な還元生成物は,メタソ+エチレンから,2さらにギ酸へと変化した。電着したCdをアノード溶出法を用いて溶解させ,電着量を溶出に要した電気量として測定した。また溶出電位から,Cdの電着状態を吸着原子とバルク状とに分けて測定した。この結果から,Cdの電着は限界電流条件で,ランダム電着モデルにしたがうことがわかった。電極表面をCdが未電着のCu露出面,吸着原子Cdの面,多層化Cdの面に分け,反応中の各面の割合を,見かけの被覆率の関数として表現した。以上の検討によりメタン,エチレンは露出Cu面iCOは吸着原子Cd面,ギ酸は多層化Cd颪上でそれぞれ生成すると結論された。特に吸着原子のCdはバルクのCd金属とは反応特性が異なることを明らかにした。
  • 上田 壽, 内空閑 三郎
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 879-884
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    キレート樹脂(SX103)の脱臭作用をESR吸収法によって研究した。樹脂はコパルトイオンを中心金属として含むものである。X-バンドESR吸収測定装置によって,NH3とH2Sの吸収とそれによるコバルトイオンの状態変化を観察した。結果を見ると,コバルトイオンには,線幅の狭いESR吸収を与えるもや(Co,nイオンと表記する)と線輻の広いESR吸収を与えるもの(Co,nイオンと表記する)と参あって,bの方がガスの吸着によって酸化状態を変えることが見いだされた。ガス吸取に際して主とレて働いているのはb型のコバルトイオンであることが結論される。また硫化水素は単に吸収されるだけではなく,空気酸化もされ得ることがESR吸収スペクトルの観察から指摘できる。
  • 持田 勲, 孫 彦妃, 藤津 博, 木佐森 聖樹, 河野 静夫
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 885-890
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリアクリロニトリル(PAN)系活性炭素繊維(ACF),ピッチ系活性炭素繊維,活性炭およびそれらに数種類の鉄塩あるいは銅壇を各5wt%を担持し,NO(500ppm)のN2への還元反応性を固定床流通式反応装置を用いて,温度200~350℃,接触時間1/50~1/2009・min/mlの条件で調べた。PAN-ACF単独でも反応初期にはNO還元が進行するが,すぐに失活し,3時間以後,約10%めNO転化率になった。銅塩あるいは鉄壇を担持すると,定常的にCO2を生成しながらNOがN2に還元される。反応ガスに酸素(5%)を添加すると,NOの転化率が82~100%へといちじるしく増大すると同時に,CO2生成も増大し,炭素の損耗が極めて大きくなる。酢酸銅を担持したPAN-ACFが最も少ない炭素損耗で,最も高いNO転化率を示し,250℃で24時間にわたる反応の間,100%の定常転化率を示した。反応ガスにさらに一酸化炭素あるいはプロピレンを130~600ppm添加すると,NO転化率はわずかに低下するが,炭素損耗をいちじるしく抑剃できた。銅塩はPAN-ACF上で酸化銅(1)に還元され,NOを活性化し,活性炭素繊維の炭素とNOとの反応を促進すると理解できる。酢酸銅はPAN-ACF上に最もよく分散して,高い反応性を与えたと考えられる。
  • 佐野 洋一, 松本 勝, 永石 俊幸, 吉永 俊一, 磯村 計明, 谷口 宏
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 891-897
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    最近の廃液組成は新技術や新材料の発展とともに複雑多岐になってきており有機物が混入してきている。それらを含む重金属廃液の中和凝集沈殿処理は非常に困難である。今回は,とくに水溶性ベンゼノイドが銅廃液に混入した場合についての中科凝集沈殿処理における影響について研究を行った。一置換ベンゼン誘導体であるフェノール,安息香酸,およびアニリンが混入した銅廃液の中和凝集沈殿処理は可能であった。二置換ベンゼン誘導体で,ヒドロキシル基を有するオルト置換であるカテコール,サリチル酸,およびアミノフェノールが混入した銅廃液の中和凝集沈殿処理は困難であった。これは二置換ベンゼン化合物からの解離生成物と銅イオンの存在がほぼ比例することから,これらの生成物による銅イオンとの錯化合物が生成する。中湘凝集沈殿処理におけるこれらの化合物の影響は銅の錯形成とそれらの安定度に依存することが得られた。その影響の順はカテコール>サリチル酸>アミノフェノールであった。
  • 井藤 壯太郎, 山口 登志子
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 898-907
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    尿素系土質安定剤のゲル化反応の化学的内容を明らかにする目的で,土質安定剤(尿素ホルムアルデヒド初期縮合物)ならびに生成したゲルの組成分析を行いゲル化反応前後の物質収支を調べ,またゲル化反応の進行度に与えるゲル化条件(温度,ゲル化時間,尿素添加量,触媒濃度,水添加量)の影響を調べた。その結果,つぎの4点が明らかになった。(1)尿素系土質安定剤の主剤溶液中のホルムアルデヒドの約80%はN,N,-ビス(ヒドロキシメチル)尿素型化合物(BHU)として存在しており,ゲル化反応はこのBHUと助剤として添加した尿素との間の酸触媒縮合反応として理解される。(2)ゲル化反応生成物は,尿素添加量に応'じてBHU2molに対し尿素1~3molが縮合したN,N-ジヒドロキシメチル-2,4,6,8-テトラアザノナンジアミド,N-ヒドロキシメチル-5,9-ジオキソ-2,4,6,8,10,12-ヘキサアザトリデカンジアミドあるいは5,9,13-トリオキソ-2,4,6,8 ,10,12,14,16-オクタアザヘプタデカンジアミドを主体とするものである。(3)BHUに対して大過剰の尿素を撫えるとゲル生成量が最適条件の約1/4に減少し,水に可溶な2,4,6,8-テトラアザノナンジアミドを生成する。(4)反応条件によるこれらの生成物組成の変化は,BHUと尿素との縮合により生成する2V-ヒドロキシメチル-2,4-ジアザペンタソジアミドが共通な中間体であると仮定することにより矛盾なく説明できる。
  • 永井 正敏, 瓜本 英雄, 崎川 範行
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 908-909
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The hydrodesulfurization of dibenzothiophene and 2, 8-die thyldibenzothiphene over the sulfied CoMo/Al2O3 catalyst was studied using a batch method. The experiment was carried out at 250∼350°C and 5.0 MPa of H2 initial pressure for 4 h. The hydrogenation of biphenyl did not take place until dibenzothiophene was converted completely. The hydrodesulfurization of 2, 8-diethyldibenzothiophene proceeded more readily than that of dibenzothiophene. The percent desulfurization and the amount of H2 consumption of 2, 8-diethyldibenzothiophene was 1.9 and O.27 times those of dibenzothiophene, respectively (Table 1). The results showed that 2, 8-diethyldibenzothiophene was desulfurized more easily than dibenzothi ophene with relatively samll amount of H2 consumption during hydrodesuljurization.
  • 奥 彬, 田中 健吾, 中路 敏行, 鎌田 徹
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 910-912
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Matsugasaki, Sakyo-ku, Kyoto-shi 606 Japan Halogen atoms (Cl and F) of 1, 1, 2-trichloro-1, 2, 2-trifluoroethane (CFC-113)) were efficiently (nearly 100%) removed as sodium chloride and fluoride by treatment with sodium dihydronaphthylide in THF at room temperature under UV light irradiation. The rate of defluorination under the irradiation was found much faster than that without irradiation, thus the defluorination was completed at a room temperature within 100 min. Analysis of the reaction intermediates was also carried out by a capillary GC-mass spectroscopy to show that the major intermediates were produced by the coupling reaction between dihydronaphthylide and two-carbon unit of CFC-113.
  • 北村 守次, 加藤 拓紀, 関口 恭一, 田口 圭介, 玉置 元則, 大原 真由美, 森 淳子, 村野 健太郎, 若松 伸司, 山中 芳夫, ...
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 913-919
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    日本全国で統一的な手法によって行われた酸性雨調査としては初めてのものである,1984年4月から1988年3月に全国29地点において実施された環境庁第1次酸性雨対策調査で得られた降水のpH値について,その空間分布を調べた。各地点のpHの年平均値は4.4~5.5の範囲に,また,4年ないし2年の調査期間全体の平均値は4.6~5.2の範囲にあり,相対的にみると,西日本で低く,北海道・東北地方で高かった。pHの頻度分布は,最頻階級が4.5~4。9の標準的な一山型,それより低い一山型,それより高い一山型,二山型の4タイプに分類でき,二山型の分布を示す地点は道路または都市粉じんの影響を受けていると考えられた。pH頻度分布の夏期と冬期における季節差を見ると,西日本と日本海側では冬期に低く,東日本では夏期に低かった。これらのことから,日本の降水を概括的に見た場合,西日本と日本海側では冬期に北西季節風によってもたらされる,酸性の汚染物質の影響を,東北日本では冬期に粉じんなど塩基性の汚染物質の影響をそれぞれ受けていることが示唆された。
  • 森 淳子, 大原 真由美, 若松 伸司, 村野 健太郎, 田口 圭介, 関口 恭一, 玉置 元則, 加藤 拓紀, 北村 守次, 大喜多 敏一 ...
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 920-929
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    環境庁が第一次酸性雨対策調査として行った全国調査の結果をもとにわが国の大気沈着物中に含まれる硝酸イオンと硫酸イオンについて考察した。
    硝酸イオンと硫酸イオンの比に現れる両イオンの全国的沈着状況を発生源分布なども勘案しながらみた。その結果,両イオンの沈着状況は必ずしも人為的発生源の分布とは一致せず,日本海沿岸および多量の降水量を示す地点において両イオンの多量の沈着がみられた。硝酸イオンについては首都圏や都市部などで全国平均を上回る沈着がみられ,窒素酸化物の地域的排出状況を反映していると考えられ,これらの地点では硝酸イオン/硫酸イオン比が高い傾向を示した。硫酸イオンについてはより広範囲における沈着がみられ,日本海沿岸および九州を中心とした地点では,非海洋由来の硫酸イオンが硝酸イオンにくらべその沈着量が卓越しており,硝酸イオン/硫酸イオン比は低い値を示した。このほか比較的清浄な地点など全国の酸性沈着物の地域特性を明らかにした。
    次にpHと硝酸イオン/硫酸イオン濃度当量比との関係を検討した。その結果pHの低下に寄与する主なイオンは,全国的にみると硫酸イオンであるが本州の都市部では硝酸イオンの寄与が高くなることが明らかになった。
  • 玉置 元則, 正賀 充, 平木 隆年
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 930-935
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    神戸で1984年6月から1990年5月まで,1降水全量採取法で,降水を採取し,そのpHおよび主成分を測定した。得られた533試料のpH平均値(降水量で重みづけしたH+濃度の加重平均)は4.39であった。pHの変動福は小さく,季節的変動は明確ではなかった。pHの階級別出現率は,4~5の範囲に全体のほぼ2/3以上が出現し,pHの各年の平均値付近に最大の出現率が見られた。H+の年間沈着量の平均値は0.0439・m-2・y-1(y:年)であった。各成分の平均濃度は次のようであった。SO42-:2.55,NO3-:1.17,Cl-:1.68,NH4+:0.32,Ca2+:0.47,Mg2+:0.14,K+:0.08,Na+:O.77μg・ml-1。これらは,東京など日本の他の大都市域とほぼ同程度の値である。陰イオン中ではSO42-とCl-の占める割合が大きく,NO3-の占める割合は小さかった。一方,陽イオンでは,H+,Ca2+ならびにNa+の占める割合が大きかった。降水のNO3-/nss-SO42-(nss:非海洋由来)とNH4+/nss-Ca2+の当量比の平均値は0.39と0.90であった。また,(NH4++nss-Ca2+)/(NO3-+nss-SO42-)の当量比の平均値は0.59で東京のような大きい値ではなかった。
  • 鶴見 実, 新島 啓司, 一國 雅巳
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 936-943
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    大気からの全降下物に含まれる可溶性のH+,Na+, K+, NH4+, Mg2+, Ca2+, Cl+, Br+, NO3-and SO42-の起源を,これらの沈着量の地域的分布から検討した。降下物試料の捕集は1988年6月から7月の1か月間に海岸の工業地帯から奥多摩山地にいたるまでの41地点で行った。Na+,NH4+,Ca2+,Mg2+,Cl-,SO42-の沈着量は,海岸からの距離が増加するとともに減少した。Na+が海塩に由来すると仮定すると,Ca2+,Mg2+,Cl-,SO42-の平均沈着量に対する海塩の寄与はそれぞれ3,30,40,2%以下であると計算された。C1-,Br-はこれまで主に海塩由来とされてきた。しかしBr-/Cl-比は海塩の比より大きく,これらの元素がガソリンや石油の燃焼に由来することを示唆した。K+は全地域にわたってほぼ一定に降下していた。NO3-と[H+]+[NH4+]の最大沈着量は発生源の多く存在すると考えられる臨海工業地帯には見られず,そこから離れた町田市で観測された。このことは町田市付近にNOxの酸化されて降下しやすい条件があることを示唆している。SO42-の沈着量は酸性物質の沈着量分布とは一致せず,海岸域におけるCaSO4, MgSO4,(NH4)2SO4の発生を示した。
  • 飯盛 和代, 中添 勝代, 秀 そのみ, 飯盛 喜代春
    1991 年 1991 巻 6 号 p. 944-950
    発行日: 1991/06/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    佐賀市における降雨の化学成分について検討した。測定した化学成分はpH,硝酸態窒素,亜硝酸態窒素,アンモニア態窒素,およびナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム,亜鉛,塩化物,硫酸の各イオンと電気伝導率である。採水は1日分ずつ行った。佐賀市内において1989年1年間のpHは4.00~5.90で算術平均値は4.87であり,雨量で重み付けした平均値は5.01であった。佐賀市における降雨の酸性化は硝酸イオン,硫酸イオソが主な起因である。しかし12月は非海塩起源の塩化物イオンが増加し降雨の酸性化に塩化物イオソの影響もあるものと考えられる。佐賀市の硫酸イオソの起源は海塩起源の硫酸イオソが非海塩起源の硫酸イオンより多いときが全試料中の58%であった。
    佐賀市の降雨中の陽イオン,陰イオソのそれぞれの総当量は(約86μeq.dm-3)全国平均として先に報告されている値(約135μeq・dm-3)より低い。また酸性度ポテンシャル([NO3-]+[SO42-]nss)も全国平均より低い。非海塩起源の硫酸イオソの濃度は低く,酸性度ポテンシャルと中和ポテンシャル([NH4+]+[Ca2+]nss)との差が低くなりその結果pHが他の都市にくらべ高くなっている。
  • 1991 年 1991 巻 6 号 p. 951a
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 1991 巻 6 号 p. 951b
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
feedback
Top