日本化学会誌(化学と工業化学)
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水素結合に基づく生体関連物質の分子認識
青山 安宏
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1991 年 1991 巻 8 号 p. 1041-1049

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抄録

非極性有機溶媒中での多点水素結合に基づくホストーゲスト相互作用について検討した。用いたホストは2-ヒドロキシ-1-ナフチル基をもつポルフィリン誘導体および四つのアルキリデン基で橋かけした環状テトラキス(レゾルシノール)誘導体であるが,これらはいずれもフェノール性ヒドロキシル基(対)を単位水素結合部位としてもっている。ゲストはアミノ酸,キノン,ジカルボン酸,ジオール,糖,ヌクレオチドなどの生体関連物質である。多点相互作用に組み込まれた「分子内」水素結合は最適ゲストの捕捉に大きな選択性を与えるのみならず,いちじるしい鎖長選択性・立体選択性をもたらす。また,「分子内」水素結合の分子間水素結合に対する優i位性は約1 .5kcal/molである。このような相互作用を利用して糖類を有機溶媒に可溶化することができる。この場合,アノマー位に関して大きな立体選択性が認められる。一方,どのような糖が有効に抽出されるかについての選択性は糖分子全体の疎水性(脂溶性)に支配されている。多点相互作用の応用についてもいくつかの例で検討を加えた。最も重要なのは,非共有結合に基づくホスト-ゲスト相互作用が,機能性分子錯体の自発的な構築や光学活性ゲストの立体化学の決定に利用できる点である。その他,糖の合成化学にユニークな方法論をもたらし,多官能性有機触媒の開発にも新たなみちを拓いた。

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