日本化学会誌(化学と工業化学)
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酸化物粉体-電解質水溶液系における溶存種の構造変化-α-アルミナ-塩化ニッケル(II)水溶液系-
出来 成人水畑 穣中村 真也梶並 昭彦金治 幸雄
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1991 年 1991 巻 9 号 p. 1161-1166

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抄録

α-Al2O3 Powder/NiC2粉体-NiCl2水溶液共存系において,可視吸収スペクトルを測定したところ,水溶液中とは異なる吸収スペクトルが得られた.Ni(II)六配位錯体の吸収パンドのうち,25.3×103cm-1のピークをもつ3A2g3T1gに帰属されるd-d遷移の吸収は低波数側にシフトした。また,Ni(II)四配位錯体の吸収パンドの増大に起因する15.2×103cm-1の吸収強度はより高い値を示した.このことから,固液共存系において,Ni(II)溶存イオンがより濃度の高い溶液中での配位構造をとることが明らかとなった。また,この変化は固相濃度および固相比表面積の増大とともに顕著となった。また,Ni(II)六配位錯体に基づく吸収バンドに対するNi(II)四配位錯体に基づく吸収パンドの強度比は固相表面に存在する液相の見かけの平均厚みに対して明確な依存性を示した,これより,高固相濃度領域における固一液共存系の液相中の溶液構造は固相の影響を受け,とくに固相表面には,固相による水分子の配向や束縛に起因するバルクとは異なった構造をもつ溶液相が20~30nmの厚みを持って存在することが明らかとなった。

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