日本化学会誌(化学と工業化学)
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高強力・高弾性アラミド繊維の開発
平塚 尚三郎松井 亨景
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1992 年 1992 巻 3 号 p. 237-245

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抄録

アラミド繊維は優れた耐熱性を有する。なかでも,パラ系アラミドは,高強力・高弾性となるが,剛薗性が高いために不溶,不融化して極めて繊維成形が難しい。著者らは,剛直な分子鎖をわずかに柔軟化して有機溶媒に可溶化させて直接紡糸し,延伸により高強力化する探索研究を重ねてきた。本来,溶解性と剛直性は原理的に背反するので実現困難な課題と考えられていたが,種々のポリマーについて検討した結果,テレフタロイルジクロリド50mol%とp-フェニレンジアミン25mol%および3,4-ジアミノジフェニルエーテル25mol%の3成分共重合を行ったところ,高温下で高倍率に延伸すると極めて強度の高い繊維が得られることを見いだした。このメタ位のエーテル結合の導入が重要で,可溶性と分子全体の剛直性を両立させている。この共重合の重合条件・製糸技術の確立に努め,従来考えられなかった約500℃ という厳しい高温下での延伸技術により,3.4GPaの高強度が達成された。また,この繊維は,耐薬品性,耐摩耗性および耐屈曲疲労性にも優れており,ゴム・セメント・プラスチック補強材,一般産業資材,防護衣などへの用途開発が進んでいる。

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