1992 年 1992 巻 3 号 p. 301-306
1-(p-置換フェニル)-1,3-ブタンジオン類を配位子としたクロム(III)錯体,CrL3(L=p-XC6H4CO・CHCOCH3,X=NO2[1],COOH[2],COOCH3[3],Br[4],Cl[5],H[6],NHCOCH3[7],C2H5[8]tCH3[9],OCH3[10],OH[11])を合成し,得られた錯体をアルミナによるカラムクロマトグラフィー法によってmer異性体とfac異性体に分離したのち,これらの錯体の立体配置,Cr(III)-O問の結合の強さや安定性を磁気的,スペクトル的データから検討した。これらの異性体の磁気モーメントは高スピン型のd3配置に相当する値を示し,また八面体型に相当するν1(4T2g(F)←4A29(F)遷移)とV2(4T1g(F)←4A2g(F)遷移)の配位子場吸収帯が約17.5×103cm-1と約23.5×103cm-1に確認された。vc=o+vc=o,Ring def.+vCr-o,vCr-C+vc-cH3,ならびにv1,の各吸収帯は,置換基が電子求引性から供与性になるほど,高波数側へ移動した。このことから,Cr(III)-O間の結合の強さは[1]<[2]<[3]<[4]<[5]<[6]=[7]<[8]<[9]<[10]<[11]の順に増加することがわかった。結晶場分裂エネルギー10Dqならびに電子間反発パラメーターBはそれぞれ17.4×103~18.0×103cm-1ならびに510~610cm-1であった。
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