日本化学会誌(化学と工業化学)
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溶媒抽出/誘導結合プラズマ発光分光分析法に天然水中微量タリウムの定量
宮崎 章三瓶 貴弘田尾 博明長瀬 多加子
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1992 年 1992 巻 3 号 p. 307-311

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抄録

水中の微量タリウムを定量するために,試料中のTlをammonium 1-pyrrolidinecarbodithioate(ammonium tetramethylenedithiocarbamate)(APDC)とhexahydro-1H-azepiniumhexahydro-1H-azepine-1-carbodithioate(hexameth yleneammoniumhexamethylenedithiocarbamate,HMAHMDC)を用い2,6-ジメチル-4-ヘプタノン(DIBK)に抽出し,T1II190.86nmの波長を用い誘結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)で測定した。T1のスペクトルプロファイルは約190.855nm 導と約190・867nmにピークを示すが,これはT1の核スピンによる超微細構造であることがわかった。DIBKにT1を抽出してICPに導入した場合には,溶媒中の炭素の影響と思われるパックグラウンドの増大により妨害されるが,190・855nmの波長で測定すれば直線の検量線が得られた。63種類の共存元素のち,OsとWについてT1と重なる発光線が認められたが,溶媒抽出後にはOs(田)はT1と同等量,Wは少なくとも40倍量まで許容できた。濃縮倍率を20倍としたときの検出限界(3σ)は1.3ng/mlで,30ng/mlにおける溶媒抽出操作を含めた相対標準偏差(n=10)は5 .4%であった。本法によるNIST標準試料1643bの分析結果は保証値とよく一致した。また,国内のいくつかの河川水,鉱内水,温泉水から15ng/ml以上のT1が検出された。

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