日本化学会誌(化学と工業化学)
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ポリ(L-グルタミン酸γ-ベンジルエステル)等方相からの構造形成
森 紀夫伊藤 敏
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1992 年 1992 巻 3 号 p. 329-334

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抄録

ポリ(L-グルタミン酸γ-ペンジルエステル)(PBLG)のN,N-ジメチルホルムアミド濃厚溶液が等方相(125℃)から急冷されたとき,どのような過程を経てコレステリックらせん構造が形成され,それが熱平衡状態に達するかをネマチック温度(90℃)から急冷された場合のそれと比較して検討した。PBLGは分子量15万のものを濃度0.191v/vに調製して使用した。系の時間経過とともに,偏光顕微鏡観察,He-Neガスレーザーを光源とした透過強度の測定,広角および小角光散乱像の写真撮影,落球法による粘度測定が行われた。得られた結果から系は次のような段階を経て,熱力学的に平衡で均一な高次構造を形成する事が見いだされた。(1)急冷後の短い時間(1分程度)内に等方相から複屈折相が急激に球晶として出現し,系全体が複屈折相でおおわれる。(2)その複屈折相から不規劉なコレステリックピヅチが出現するが,ネマチック状態からの構造形成と異なり,系全体が次第に規則性を増大するのではなく,系の一部が均一な規則構造を形成しその部分が成長核となって規則構造が拡大し,ついに系全体が高次のコレステリック構造を形成する。また,その構造はネマチック状態から急冷されたときに形成された構造と区別する事は出来なかった。

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