日本化学会誌(化学と工業化学)
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ジルコニアコーティング被膜の調製と赤外吸収スペクトル
室谷 正彰矢口 和彦
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1992 年 1992 巻 8 号 p. 804-811

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抄録

酸化ジルコニウム(IV)水科物(以下水和ジルコニアとよぶ)被膜を,硝酸酸化ジルコニウム(IV),塩化酸化ジルコニウム(IV)およびジルコニウムプロポキシドを原料として,デイップコーティング法により調製した。この被膜の成膜性と状態,熱処理および化学処理特性をPR-FTIR,XRD,XPSおよびEPMAにより測定した。被膜はにじ色を呈し,その膜厚は溶液ゾルの濃度や成膜操作回数に依存し,0.3~1.3μmであった。室温で乾燥した被膜はおよそ720cm-1で基質構造にかかわるブロードな吸収を示し,この吸収帯は三つの吸収の重なり(重なり帯)であった。重なり帯の半値幅と強度は被膜の熱処理にセンシティブであり,およそ300℃ でシャープで強い吸収帯形に変化した。これは,小さな粒径の水和ジルコニアが,熱処理されたことにより粒子成長を遂げ,正方または単斜晶系に属するジルコニアへ変化していく過程を反映している。また,重なり帯の強度,波数および吸収帯波形は被膜が酸およびアルカリと接触してもまったくかわらず,被膜の耐化学性の高いことなどが明らかとなった。

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