抄録
シアン含有排水を再利用する目的で,シアンを含む排水に紫外線を照射しながらオゾン酸化を行い,この処理水を陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂の順に通水した。その結果,オゾン酸化処理では処理薬品を用いることなくシアンが短時間でシアン酸まで酸化された。イオン交換処理では陽イオン交換樹脂塔内で負電荷のシアン酸イオンが正電荷のアンモニウムイオンに変化し,陽イオン交換樹脂に吸着された。陰イオン交換樹脂塔出口の処理水は電気伝導率10μS/cm以下の脱イオン水となり,生産工程における水洗水として再利用できた.上記の実験結果に基づき実用規模のシアン含有排水のリサイクルシステムを考案した。飽和に達したイオン交換樹脂は塔容器ごと再生専用の工場に運搬して再生を行う集中再生方式を採用した。
本技術の開発によりこれまでアルカリ塩素法により処理して廃棄していた有害なシアン排水が脱イオン水として再利用できるようになった。めっき工場排水などの紫外線照射併用オゾン酸化に伴って発生する金属スラッジ量はアルカリ塩素法の約1/3であった。