抄録
カルバゾールカルバルデヒドヒドラゾン誘導体を電荷輸送材料として用いた単層有機感光体の光疲労現象の改良に関する研究結果を報告する。電子デバイスとして広く用いられている有機感光体は,実用性を考えた場合,種々の光暴露に対し安定でなければならず,この問題の解決が感光体の開発において大きな課題となる。著者らが開発した単層有機感光体の実用化においても,白色光の照射により光感度が低下する現象を解決する必要があった。この問題は,電荷輸送材料として用いたカルバゾールカルバルデヒドヒドラゾンが紫外線を吸収することで光異性化反応を起こすことに起因したため,この光反応の抑制を,紫外線吸収剤またはカルバゾールカルバルデヒドヒドラゾンの光励起エネルギーの失活剤を添加することにより試みた。その結果,両者ともに光感度などその他の特性を大きく低下させることなく,光照封による光感度の低下を抑制することに効果を示したが,エネルギー失活剤を用いる方が少量の添加により効果が得られた。また,電気特性以外に感光体は熱的により安定であることが望まれるが,エネルギー失活剤を用いた方が,感光層の熱軟化点を大きく低下させることなく光安定性を向上させられることが明らかとなった。