日本化学会誌(化学と工業化学)
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高性能ニッケル水素蓄電池の開発
野上 光造古川 修弘
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1995 年 1995 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

著者らが1990年に世界に先がけて商品化に成功したニッケル-水素蓄電池はニッケル-カドミウム電池と同等の作動電圧で,しかも1.5倍以上高容量であり,現在では,急速に普及が拡大してきている.この電池を商品化するに至ったのは,電池用水素吸蔵合金の開発を中心とする技術課題に取り組んだ成果であり,それらの概要について紹介する.電池用水素吸蔵合金としでは,電極触媒能に優れていることからLaNi5系の合金に着目し,他元素で一部置換していくことにより,高容量と高耐食性を合わせ持つ材料の開発を目指した.試験電極あるいは試験電池で特性を確認していくなかで,MmNi3.2Co1.0Al0.2Mn0.6(Mm:misch metal)の合金組成がそれに合致することを見いだし,高容量かつ長寿命の電池が構成できることを立証した.さらに,ニッケル極をカドミウムを含まない組成にして,従来と同等レベルに高性能化した.また,ニッケル-水素蓄電池特有の反応形態を解析することにより,構成技術を確立した.このようにして開発したニッケル-水素蓄電池は,1.2時間充電,4C放電,500回以上の充放電が可能であるなど優れた特性が得られ,通信機,コンピューターなどの高性能機器の電源への適用が可能となった.

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