1995 年 1995 巻 10 号 p. 755-762
触媒量のニッケル(II),鉄(III),バナジウム(IV),あるいはマンガン(II)錯体とアルデヒドを組み合わせ用いることによって,種々のオレフィンが酸素酸化され,対応するエポキシドが得られることを見いだした.この場合,錯体触媒の配位子として用いる1,3-ジケトンの構造設計によって,触媒性能が制御され,通常のオレフィンのほか,スチレン誘導体・α,β-不飽和カルボン酸アミドなども酸素酸化されて,対応するエポキシドが高い収率で得られる.また,コレステロール誘導体の酸素エポキシ化では,mCPBAや過酢酸などの過酸によるエポキシ化で通常得られるα-エポキシドではなく,β -エポキシドが選択的に得られることがわかった.さらに,光学活性な1,3-ジケトン型配位子として,N,N'-ビス(3-オキソブチリデン)ジアミン誘導体を有する光学活性β-ジケトン型マンガン(III)錯体のX線結晶構造解析の結果を基にして,立体的にかさ高い配位子を設計し,優れた性質を示す錯体を合成した.これを触媒として用いると,特別な官能基を持たない単純オレフィンから対応する光学活性エポキシドが良好ないしは高い光学収率で得られる.この反応では,N-メチルイミダゾールの添加により得られる光学活性エポキシドの絶対立体配置の逆転が観測されたことから,酸素不斉エポキシ化反応は,アシルペルオキソ錯体が活性中間体であると推定した.
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