日本化学会誌(化学と工業化学)
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1995 巻, 10 号
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  • 山田 徹, 永田 卓司, 向山 光昭
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 755-762
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    触媒量のニッケル(II),鉄(III),バナジウム(IV),あるいはマンガン(II)錯体とアルデヒドを組み合わせ用いることによって,種々のオレフィンが酸素酸化され,対応するエポキシドが得られることを見いだした.この場合,錯体触媒の配位子として用いる1,3-ジケトンの構造設計によって,触媒性能が制御され,通常のオレフィンのほか,スチレン誘導体・α,β-不飽和カルボン酸アミドなども酸素酸化されて,対応するエポキシドが高い収率で得られる.また,コレステロール誘導体の酸素エポキシ化では,mCPBAや過酢酸などの過酸によるエポキシ化で通常得られるα-エポキシドではなく,β -エポキシドが選択的に得られることがわかった.さらに,光学活性な1,3-ジケトン型配位子として,N,N'-ビス(3-オキソブチリデン)ジアミン誘導体を有する光学活性β-ジケトン型マンガン(III)錯体のX線結晶構造解析の結果を基にして,立体的にかさ高い配位子を設計し,優れた性質を示す錯体を合成した.これを触媒として用いると,特別な官能基を持たない単純オレフィンから対応する光学活性エポキシドが良好ないしは高い光学収率で得られる.この反応では,N-メチルイミダゾールの添加により得られる光学活性エポキシドの絶対立体配置の逆転が観測されたことから,酸素不斉エポキシ化反応は,アシルペルオキソ錯体が活性中間体であると推定した.
  • 大前 貴之
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 763-767
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    同種の分子が繰り返し連なってできた鎖状および環状分子のHückel近似下でのプロパゲーターを,三角関数を用いて簡単で扱い易い形で表した.この表現法は種々の量子化学的量を具体的に計算する際に有用であり,例として中性の鎖状および環状系の電子密度を計算した.
  • 日比野 高士, 宇敷 建一, 桑原 好孝, 棚木 秋彦, 岩原 弘育
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 768-773
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高温型プロトン導電性セラミックスを固体電解質に用いて,二つのガス室を設けなくても作動できる起電力式炭化水素センサーを構成した.センサー素子Pd | CaZr0.9In0.1O3-α | Au,は,700℃ において空気中に含まれる1%以下のメタン,エタン,プロパンに対して安定した起電力信号を発生した.この場合,90%応答時間は10秒以内とかなり速く,起電力値と炭化水素濃度の間にはよい直線関係が得られた.本センサーのセンシング機構は,PdとAu電極間での炭化水素の燃焼に対する触媒活性能の違いに基づいていた.
  • 菅野 亨, 小林 正義
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 774-778
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    MgO表面の配位不飽和性を評価するパラメーターとして,CO導入後の昇温脱離(TPD)実験により得られたCO+CO2の全脱離量に占めるCO比,CO/(CO+CO2)(=R)を提案した.出発物質及び前処理雰囲気を変えた種々調製条件のMgOサンプルについてRを比較した.COガス導入により,COクラスターと炭酸イオン生成反応及び炭素と炭酸イオン生成(Boudouart)反応二つが併発して進行し,各サンブルにおけるRの違いは,これら二つの反応特性の違いに依存する.Rは出発物質としてMgOよりMg(OH)2を用いた場合の方が高い値を示し,また前処理雰囲気を酸素或は水素からヘリウムにする事により高い値を与えた.これらの序列を与える理由は,上記二つの反応の配位不飽和性サイトへの依存性の違いに起因すると考えることにより,すべての実験結果が矛盾なく説明できた.したがってこのRからMgO表面の配位不飽和性の見積もりが可能であると結論した.
  • 新庄 博文, 横田 幸治, 土井 晴夫, 杉浦 正沿, 松浦 慎次
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 779-788
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    自動車用Pd三元触媒の問題点であった低いNOx浄化活性がBaの添加により向上することを見いだした.Pd三元触媒のNOx 浄化活性向上におけるBa添加効果を解明する目的で,γ-アルミナ担持Pd触媒およびBa添加触媒を用いて排気モデルガスによる反応挙動を調べた.同時に,各種ガスの吸着量測定,水性ガスシフト反応,水蒸気改質反応およびプロピレン酸化反応も行った.その結果,(1)100~500℃ での理論空燃比の排気モデルガスによる浄化反応時,(2)空燃比が還元雰囲気の排気モデルガスによる浄化反応時に,Ba添加による顕著な活性向上がみられた.Ba添加による活性向上の原因は,(1)Ba添加によるNO吸着量の増加が,理論空燃比での酸素に対するNOの還元ガスへの反応選択性を向上させることと,(2)還元雰囲気下での炭化水素(C3H6など)によるPdの被毒がBa添加により緩和され,活性が維持されること,であると結論した.
  • 大津 雅人, 舟窪 浩, 日置 毅, 篠崎 和夫, 赤井 孝夫, 水谷 惟恭
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 789-795
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    CVD法で(100)MgO基板上に合成したエピタキシャル成長PbTiO3およびPZT薄膜の残留ひずみをX線回折を用いて調べた.薄膜のc軸とa軸の格子定数の比(c/a)は粉末に比べて小さかった.これはキュリー点以下の温度での薄膜と基板の熱膨張率差によって生じた熱ひずみに起因している.合成後の冷却時の基板に比べて相対的に大きい薄膜のc軸およびa軸の格子定数の膨張および収縮が大きなひずみを薄膜中に生じさせている.一方,薄膜の不均一ひずみも粉末に比べて大きかった.このことは膜厚方向の格子定数の勾配に起因していると考えられる.
  • 北島 囲夫, 平野 訓, 酒井 康司, 田草川 信雄
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 796-801
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フッ素雲母の膨潤特性を明らかにするために,一定容積をもつセル中で各種フッ素雲母の圧粉成形体(O.30g)を吸水・膨潤させたときに発生する応力をロードセルを用いて測定した.この発生応力は,吸水開始後約10時間で平衡に達した.膨潤平衡時の発生応力,すなわち膨潤圧は,圧粉成形体の気孔率によって変化し,気孔率が小さいほど吸水率(wt%)が小さくなり,膨潤圧は大きくなった.これから,各種フッ素雲母の膨潤特性は,規格化した条件下で比較する必要があり,気孔率または吸水率が同じときの膨潤圧値(MPa)を比較すると良いことがわかった.また,式量が著しく異なるフッ素雲母間で比較する場合,吸水率には雲母1mol当たりの吸水量(mo1)の値を,膨潤圧には1mmol当たりに規格化した換算膨潤圧(MPa/mmo1)の値を用いると良いことがわかった.このようにして,Li型フッ素雲母[LiMg2LiSi4O10F2]はそのGe同形置換体より膨潤圧が大きく,また,層電荷(x)の異なるNa型フッ素雲母[NixMg3-xLix (Si4O10)F2]では,層電荷の小さい雲母は層電荷の大きい雲母より膨潤圧が大きいことが判明し,規格化した条件下での膨潤圧の値はフッ素雲母の膨潤特性を表す有効な特性値となることがわかった.
  • 土居 多, 平井 健太郎, 中村 総夫, 郡司 天博, 長尾 幸徳, 御園 生堯久, 阿部 芳首
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 802-808
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビスマス系酸化物超伝導体作成の前駆体となるジビバロイルメタン(Hdpm),アセチルアセトン(Hacac)およびアセト酢酸エチル(Hetac)を配位子とするビスマス(III),ストロンチウム(II),カルシウム(II)の高純度錯体の合成を検討した.ビスマス錯体は,トリエチルアミン存在下における塩化ビスマス(III)と配位子Hdpmの反応あるいはビスマストリエトキシドと配位子Hacac,Hetacの反応により合成した.一方,ストロンチウムおよびカルシウム錯体は金属と配位子の反応により合成した.錯体のスペクトルや溶解性の測定結果から,その性質を調べた.
  • 森田 俊夫, 藤井 和代, 多賀 陽美, 塚本 宏樹, 高橋 一朗, 毛海 敬, 北嶋 英彦
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 809-815
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリメチルベソゾフェノン類(1a~1j)の発煙硝酸/無水酢酸系によるニトロ化を行い,アシル基のオルト位メチル基が側鎖ニトロ化された2一ニトロメチルベソゾフェノン類(2a~2j)を優先的に得た.2'-及び5'-位にニトロ基及びクロロ基を持つ2a~2dは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンで処理すると分子内求核置換反応が起こり,ついで過マンガン酸カリウム,またはニクロム酸ナトリウムで酸化すると相当するアソトラキノン誘導体(3a~3d)が得られた.3'-または3'-及び5'-位にニトロ基のみ持つ2e~2jは炭酸ナトリウムで処理すると分子内水素身代わり求核置換反応が起こり,ついでニクロム酸ナトリウムで酸化すると相当するアントラキノン誘導体(3a~3f)が得られた.
  • 青木 修三, 上林 宏
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 816-822
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    数種の水溶性合成高分子,ポリアクリル酸ナトリウム(PSA),ポリメタクリル酸ナトリウム(PSM),ポリ(2-エチルアクリル酸ナトリウム)(PSE),ポリアクリルアミドおよびポリエチレソオキシド,をpH7に調整したリン酸緩衝液中30℃ で,L-アスコルビン酸(ASA)存在下に空気を導入することで分解した.分解の進行は溶液の相対粘度の変化により追跡した.これらの高分子はいずれも容易に分解すること,さらにアクリル酸誘導体の系列では分解性はPSE < PSA < PSMの順で大となることが認められた.またASAの消失からの反応の追跡も行った.高分子の分解は,ASAの酸化過程で生成するヒドロキシルラジカルによる高分子のα-水素の引抜きおよび/またはヒドロキシルラジカルとカルボソ酸アニオソとの間の電荷移動によるアシルオキシルラジカルの生成とそれに続く脱炭酸により開始されるものと推定された.市販過酸化水素水との比較では,ASAの方が著しく高活性であり,その安全性をも含めて水溶性高分子の分解処理剤として有用であると認識された.
  • 佐久川 弘, 竹野 律子, 松木 佳奈子, 三宅 隆之, 竹田 一彦, 藤原 祺多夫
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 823-829
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1993-95年にかけて広島県内(広島市,東広島市,瀬戸内海上)の大気および雨水中有機酸濃度をイオンクロマトグラフィーにより測定した.測定した大気中有機i酸濃度は,ギ酸が0-8ppbv,酢酸が0-12ppbvであり,昼間に高く夜間に低いという日周変化が見られた.東広島における降雨中有機酸濃度は,ギ酸が0-38μM,酢酸が0-24μM,シュウ酸が0-1.5μMであり,それぞれ初期降雨に濃度が高いことがわかった.測定した有機酸の雨水中全酸性物質に占める割合を計算した結果,東広島において加重平均値として8.0%(3.1-15.0%の範囲)であった.したがって,有機酸は雨の酸性化に数%以上貢献していると考えられる.大気中有機酸の発生源を解明するために,自動車の排ガス及び焼却炉の燃焼ガス中有機酸濃度を測定したところ,ギ酸及び酢酸が数ppbv-数百ppbvレベルで検出された.シュウ酸は検出されなかった.
  • 白樫 高史, 柿井 一男, 田村 寿康, 栗山 光央
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 830-837
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    重金属イオン含量の高い嫌気性汚泥からの重金属イオンの抽出方法および抽出液中の重金属イオンの除去・回収法を検討した.嫌気性汚泥としては,排水処理場沈殿池の堆積物をタソクに保存しておいたものを使用した.この嫌気性汚泥から重金属イオンを抽出するためには汚泥を好気性化することが有効な手段であり,好気性化した汚泥からは酸あるいは配位子添加によってCu2+, Cd2+, Pb2+,Zn2+の50-100%が抽出された.汚泥の好気性化に伴い溶解度の小さい硫酸鉛が生成するため,酸による抽出ではPb2+の溶出性は小さかったが,抽出液中の重金属イオンは中和沈殿法で容易に除去・回収できた.好気性化した汚泥懸濁液にニトリロ三酢酸(NTA)を添加して電解処理を行った結果,重金属イオンの汚泥からの抽出と抽出液からの除去・回収が同時に効率良く行われることが示された.また,嫌気性汚泥懸濁液にNTAを添加し,通気しながら電解処理を行うことによっても好気性化した汚泥と同様な結果が得られた.この電解法は固液分離の必要がなく,嫌気性消化汚泥などの他の汚泥についてもその処理を容易にする方法として有効な手段になり得るものと考えられる.
  • 武隈 秀子, 武隈 真一, 松原 義治, 平井 敦司, 野副 鉄男
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 838-843
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reaction of benzo[b]cyclohept[e][1, 4]oxazine (1) (0.26 mmol) with m-phenylenediamine (2)(0.31 mmol) in 1-BuOH (1 ml) under argon at 80° C for 48 h gave two major tropopodands; Namely, 10 (3-aminophenylamino)benzo[b]cyclohept[e][1, 4]oxazine (3) (Y=38%) and 3 (3-aminophenylamino) -2-phenylaminotropone (4) (Y = 29%). Moreover, the above reaction in the presence of Ni (OAc)2 · 4 H2O (0.25 mmol) at 80°C for 24 h afforded two Ni(II) complexes 5 (Y = 5%) and 6(Y ≥ 84%) of the products 3 and 4, respectively. The structures of the products were established on the basis of their spectroscopic (UV-vis, MS, IR, and NMR) data. Possible reaction pathways for the formation of these compounds are discussed.
  • 政田 浩光, 安西 裕司, 菊地 成人
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 844-847
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The cross-coupling reaction of the Grignard reagent with alkylating reactants (RBr, RI, and ROTs)was carried out in the presence of copper (II) acetate and organic copper (II) complex catalysts (0.01- 0.05 molar amount) in tetrahydrofuran. The reaction readily gave higher hydrocarbons (n-C17H36, n-C23H48, n -C26H54, n -C27H56, n -C29H60, n -C30H62, and n-C31H64 ), 1 - phenyloctadecane, and 1-cyclohexyloctadecane as the desired products in 90 99% isolated yields under mild conditons (-10-60° C, 2 -5h). In particular, copper (II) acetate was found to be much more effective than con ventional inorganic copper (II) salt catalysts (Li2CuCl4, CuX2) from the viewpoints of availability, solubility, stability, and activity.847
  • 冨岡 敏一, 冨田 勝己, 岡 弘章, 西野 敦
    1995 年 1995 巻 10 号 p. 848-850
    発行日: 1995/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The new anti-microbial material was obtained by the reaction of silver acetate with sodium sulfite and sodium thiosulfate. From the following facts, it was suggested that the product was composed of thiosulfato silver complex; the facts were drastic change of solubility during the procedure, observation of no responce of the solution with chloride ions, no sensitivity to the silver-selective-electrode of the solution containing the product, and also estimation of the numbers of dissociated ions in the solution of the complex through the process of electric conductivity measurements of the solution.
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