日本化学会誌(化学と工業化学)
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カルボキシメチルセルロースと6-O-(2-ヒドロキシエチル)-N,N,N-トリメチルキトサンヨウ化物を担体としたテオフィリン錠剤の絞り出し現象
神林 信太郎並木 裕和
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1995 年 1995 巻 12 号 p. 1000-1005

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抄録

カルボキシメチルセルロース(CMC)~6-O-(2-ヒドロキシエチル)-N,N,N-トリメチルキトサソヨウ化物(HETMCh),CMC~6-O-(2-ヒドロキシエチル)キトサン(HECh)などのポリイオンの混合粉末を担体としたテオフィリン錠剤を調製した.この錠剤を人工胃液から人工腸液中へ一定時間後に移し変えて,テオフィリンの放出量を吸光光度法で測定した.また人工胃液中での錠剤の膨潤度の測定と,錠剤担体成分の等モル混合ポリイオン溶液の吸光度変化からポリイオソコンプレックス(PIC)形成pH範囲の測定も行った.その結果CMC~HETMCh系錠剤で,人工腸液に錠剤を移した直後にテオフィリンの放出速度が人工胃液中の放出速度に比べて最大約4.7倍も早くなる現象が見られた.このような錠剤からのテオフィリンの絞り出し現象は,HETMChの添加量の影響を強く受け,添加比R=[HETMCh]/[CMC]が0.5のときに最も大きな絞り出し現象が観察された.CMC~HECh系錠剤では,人工腸液のpHでPICを形成することができないので絞り出し現象が見られなかった.絞り出し現象の発現には錠剤が人工胃液中で十分膨潤できること,人工腸液のpH条件で安定にPICを形成し錠剤膨潤層の大きな体積収縮が起きることなどの条件が必要であることが明らかになった.

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