1995 年 1995 巻 3 号 p. 220-224
蒸煮爆砕したスギ材から溶媒抽出によりリグニン及びリグニン-糖質複合体を分離し,アシル化反応を試みた.リグニソをピリジソ中無水酢酸,塩化パルミトイル及び塩化ベソゾイルと室温で反応させると,相当するアシル化リグニンが得られた.アシル化リグニンはリグニソに比べ溶融点が低下し,また極性の低い溶媒に可溶となった.ゲル浸透クロマトグラフィーによりこれらの分子量を測定した結果,木材部位や蒸煮時間の違いによる差はなく,リグニソは約6-10量体と推定された.一方,リグニン-糖質複合体を酢酸ナトリウム存在下に無水酢酸と還流反応させたが,生成物は不完全なアセチル化体であった.しかし,この反応生成物をクロロホルムで抽出すると可溶部として三酢酸セルロースが得られ,その収量はリグニン-糖質複合体中に含まれるセルロースの全量がアセチル化されたときの理論量に等しかった.また,その平均重合度は7であり,セルロースがアセチル化反応過程で低分子化を受けて分離したものと考えられる.
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