日本化学会誌(化学と工業化学)
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写真の発色現像に基づく色素薄膜の電解合成
上原 麗樹佐治 哲夫
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1996 年 1996 巻 11 号 p. 938-943

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抄録

カラー写真に用いられる発色現像主薬(PPD)の電解酸化および後続のカップリング反応による有機色素薄膜の作製法について検討した。ITOを指示極とし,窒素置換した 0.1M(1M=1mol dm-3)NaOH の水溶液に PPD と,その 2 倍の濃度のカプラーを加え,定電位電解したところ,三原色 の透明で均一な薄膜が生成した。薄膜の SEM 像写真より,薄膜は直径が 0.1μm 程度の粒子より構成されており,膜厚は 0.4~0.5,μm であった。薄膜作成から 1 か月後の色素の吸光度変化から,安定な色素薄膜を与える最適な現像主薬とカプラーの組み合せを求めた。サイクリックボルタンメトリーにより, PPD の酸化により生成するキノンジイミン(QDI)の脱アミノ化速度と色素形成速度を求めた。これ らの速度より, pH は 9 から 11 の範囲が最適であることがわかった。マゼンタ色素薄膜作成時におい てPPD の濃度が 4mM 以下で均ーな薄膜が得られなかった理由は QDI の脱アミノ化にあり,生成した キノンが均一な色素薄膜の生成を妨げていることがわかった。また,色素薄膜作成における電流効率が PPD の濃度の高いほうが良い理由は,脱アミノ化の速度に比べ,色素生成速度が速くなるためであ ることが明らかとなった。

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