2-シクロヘキセン-1-オールの液相脱水による 1,3-シクロヘキサジエンの合成反応をゼオライトやイオン交換樹脂を中心とした固体触媒を用いて検討した。
その結果, H-ZSM-5 とイオン交換樹脂・アソバーリスト-15 が 40% 以上の収率で 1,3-シクロヘキサジエンを与えたが,他のゼオライトでは主生成物はジシクロヘキセニルエーテルであり,1,3-シクロヘキサジエンの収率は極めて低かった。
反応経路を,イオン交換樹脂と H-ZSM-5 について調べた結果,イオン交換樹脂では 2 分子間の脱水で生成するジシクロヘキセニルエーテルを中間体とする逐次反応経路で進行していること,および,生成した 1,3-シクロヘキサジエンがさらに逐次反応で重合物に転化しやすいことがわかった。一方, H-ZSM-5 では 4-メチルキノリンの被毒実験から,ジシクロヘキセニルエーテルは主として細孔 外酸点で生成しており,細孔内では形状選択性によりジシクロヘキセニルエーテル生成が抑制されるために,主として 2-シクロヘキセン-1-オールからの直接脱水経路によって 1,3-シクロヘキサジエンが生成していること,および,形状選択性によって重合物の生成が抑制されていることがわかった。
他のゼオライトにおいて主生成物がジシクロヘキセニルエーテルである理由について酸強度,細孔の大きさ,失活速度から考察した結果, H-Yでは酸強度が弱く,また,細孔が大きいため分子径の大きい中間体であるジシクロヘキセニルエーテルで反応が止まるものと考えた。一方,H-β,H-モルデナイトでは,酸強度的には 1,3-シクロヘキサジエンが生成可能であるが,活性が高く,細孔が大きいため分子径の大きい 1,3-シクロヘキサジエンの重合物が生成しやすく,失活が非常に速いために中間体のジシクロヘキセニルエーテルで止まるものと考えた。
以上の点から,ゼオライトでは H-ZSM-5 が,酸強度,形状選択性の点で 1,3-シクロヘキサジエン生成に有利であり,また,形状選択性により重合物が生成し難いため,失活の点からも 1,3-シクロヘキサジエン生成に有利なことがわかった。
抄録全体を表示