1996 年 1996 巻 5 号 p. 500-507
都市人工空間には,多様な起源の浮遊粒子状物質が存在し,その空間に起源を有する粒子の他,外部大気から取り込まれる粒子も少なくないと考えられる。発生源の特定は,環境衛生上重要な課題であるが,従来の起源解析手法では困難である。本研究では,典型的都市人工空間である地下街の粒子状物質を対象とし,発生起源の推定を行った。具体的には, 1992 年 2 月九州地区の地下街,階下の地下駐車場,それらの換気口付近の外部路上の 3 地点において,それぞれ三つの時間帯にパーソナルエアサンプラーにより捕集した.重量濃度は,ビエゾバランス粉じん計により計測した。電子線マイクロアナライザーを用いて粒子ごとに X 線スペクトルを測定し,個々の粒子の組成に基づきクラスター解析を行い,各試料ごとに起源推定を行った。起源解析結果より,地下街や地下駐車場の浮遊粒子状物質には,外部大気に由来する粒子と,各人工空間に固有の起源を有する粒子のいずれもが含まれることがわかった。また,人工空間内の粒子状物質組成に対する強制換気などによる外部からの影響が大きいことが明らかとなった。さらに,人工空間の構造や,換気システムの設計ならびに運転方法が人工空間内の汚染を制御する上で重要な役割を担うことがわかった。
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