日本化学会誌(化学と工業化学)
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銅触媒による N2O の分解 ―担体の効果―
王 杰御園生 誠
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1996 年 1996 巻 6 号 p. 530-538

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抄録

担持状態の異なる Cu 触媒,すなわち, Cu イオン交換した 3 種のゼオライト(ZSM-5,モルデナイトおよび Yゼオライト)触媒, Cu を担持したγ-アルミナ触媒およびペロブスカイト関連の K2NiF4 構造を有する La1.5Sr0.5CuO4 触媒を用いて,流通反応系により N2O 分解反応(濃度,0.1%)を 573~773K で行い,それらCuイオンの環境の違いが触媒特性に及ぼす効果を検討した。まず,273KにおけるNO吸着および 363K における N2O 酸化法により,表面に存在する Cu の量を測定した。表面 Cu の割合は, ZSM-5 で約 80% ,モルデナイトで 50-60% , Y ゼオライト, Cu/Al2O3 で約 20% であった。これらの値を用いて表面 Cu 当たりに割り付けた N2O 分解反応速度(TurnoverFrequency,TOF)は,モルデナイト,Yゼオライト,γ--アルミナでは, Cu 担持量とともにゆるやかに増加した。一方, ZSM-5 では Cu イオン交換率の増加により加速度的に顕著に増大し, Cu 担持率 5wt% で比較すると, Cu/ZSM-5 の N2O 分解活性は他の Cu/ゼオライトに比べて約 2 桁ほど高くなった。 La1.5Sr0.5CuO4は比表面積が小さいが,表面 Cu 当たりの活性は, ZSM-5 より劣るもののそれ以外の担体に比べて著しく高かった。さらに, N2O 分解反応における N2O 分子の拡散の影響について考察し,本実験条件下で触媒有効係数はほぼ 1 と推定した。従って,拡散の影響は無視でき,求めた TOF は触媒活性点の真の活性を反映するものと結論した。

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