抄録
デカン(DAN),ジブチルエーテル(DBE),3-デカノソ(DON)およびデカソ酸メチル(MD)中の溶存水が形成する各クラスターを,IRスペクトル法で検討した.また,各クラスターの熱変化(20-200℃)を調べた.その結果,次のようなことがわかつた.
1)DANの溶存水中の単量体は全体に,二量体,三量体はアルキル鎖間に存在し,その吸収波数領域は水蒸気とほぼ同じであるが,拘束された状態にあると考えられる.また,微量の液体水が自由体積に取り込まれている.40℃ 付近より脱離するが,液体水は120℃ でも40%残留した,
2)DBE中の溶存水の大部分は,エーテル基の周辺に集合して大きいクラスターを形成している.このクラスターは熱破壊を起こし易い.エーテル結合の熱回転運動のためと考えられる.
3)DON中の溶存水は,カルボニル基の周辺に大型クラスターとして,また,アルキル鎖間に二量体,三量体として存在する.カルボニル基周辺のクラスターは熱安定性が良く,140℃ でも47%残留していた.
4)MD中の溶存水は,エステル基のカルボニルおよびエーテル酸素の周辺の大型クラスターと,アルキル鎖間に二量体,三量体として存在する.エステル基周辺のクラスターは熱安定性が良く,140℃ でも52%残留していた.