日本化学会誌(化学と工業化学)
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FTlR分光法によるデカン,ジブチルエーテル,3-デカノンおよびデカン酸メチル中の各溶存水の状態分析およびその加熱変化について
高岡 京小林 光一高橋 政志曽禰 元隆
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1999 年 1999 巻 1 号 p. 25-31

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抄録
デカン(DAN),ジブチルエーテル(DBE),3-デカノソ(DON)およびデカソ酸メチル(MD)中の溶存水が形成する各クラスターを,IRスペクトル法で検討した.また,各クラスターの熱変化(20-200℃)を調べた.その結果,次のようなことがわかつた.
1)DANの溶存水中の単量体は全体に,二量体,三量体はアルキル鎖間に存在し,その吸収波数領域は水蒸気とほぼ同じであるが,拘束された状態にあると考えられる.また,微量の液体水が自由体積に取り込まれている.40℃ 付近より脱離するが,液体水は120℃ でも40%残留した,
2)DBE中の溶存水の大部分は,エーテル基の周辺に集合して大きいクラスターを形成している.このクラスターは熱破壊を起こし易い.エーテル結合の熱回転運動のためと考えられる.
3)DON中の溶存水は,カルボニル基の周辺に大型クラスターとして,また,アルキル鎖間に二量体,三量体として存在する.カルボニル基周辺のクラスターは熱安定性が良く,140℃ でも47%残留していた.
4)MD中の溶存水は,エステル基のカルボニルおよびエーテル酸素の周辺の大型クラスターと,アルキル鎖間に二量体,三量体として存在する.エステル基周辺のクラスターは熱安定性が良く,140℃ でも52%残留していた.
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